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食と農の政治経済学:国際フードレジームと階級のダイナミクス   ヘンリー・バーンスタイン著/渡辺雅男監訳、松岡浩平+山岸拓也訳

食と農の政治経済学:国際フードレジームと階級のダイナミクス 表紙

農業と資本主義
世界の農村の貧困状態、それを生み出し再生産し続けているシステム、農業・農民の変化とその存在の多様性、それらを歴史的かつ同時代的に読み解き、グローバリゼーション下の農業の現在とこれからを考察する。

  • 四六判/上製/264頁
  • ISBN978-4-905261-08-7
  • 本体2800円+税
  • 初刷:2012年7月18日

著者の言葉

農業の政治経済学とは、雑誌 “Journal of Agrarian Change” の刊行趣旨に掲げられた定義によれば、「農業分野における生産および再生産、所有、権力と、それらの変化の過程についての社会関係および社会動態を歴史的かつ同時代的に」研究することである。近代世界の農業変化を理解するうえでは、資本主義とその発展を分析することが鍵となる。資本主義という言葉で私が意味しているのは、資本と労働の間の基本的な社会関係に立脚した生産および再生産のシステムのことである。すなわち、資本は利潤追求と資本蓄積の中で労働者を搾取し、他方、労働者は生活手段を得るために、資本のための労働を行わなければならない。この初発の一般的定義を超えたところに、多くの複雑な問題が横たわっており、また実際、この定義の中にすら、すでにそうした問題の存在を看て取ることができる。本書が探求し、説明しようとしているのは、このような複雑かつ挑戦的な課題である。

監訳者の言葉

本書は、Henry Bernstein, Class Dynamics of Agrarian Change, Kumarian Press, 2010, 160pp. の全訳である。著者のヘンリー・バーンスタインはロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)名誉教授であり、同僚のテレンス・バイレス(Terence J. Byres)と共に長く雑誌 “Journal of Peasant Studies” (1973年創刊)の編集に携わり(バイレスは創刊の1973年から2000年まで、バーンスタインは途中1985年から2000年まで)、2001年からは新たに刊行を始めた “Journal of Agrarian Change” の発刊時の編集者を務め、創刊号の巻頭論文(“From Peasant Studies to Agrarian Change”)をバイレスと共同で発表している。ケンブリッジ大学とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で歴史学と社会学を修めた彼は、これまでトルコ、タンザニア、南アフリカ、アメリカの大学で教え、その後イギリスに戻って各地の大学で教歴を重ねた開発問題と農業経済学(agrarian political economy)の第一人者である。現在、北京の中国農業大学の客員教授を務めている。

雑誌編集に長く携わっていた経歴からも分かるように、彼の持ち味は編者としての研究の組織化にある。そのため、編者となって数々の論文集を世に送り出しているが、不思議なことに単独の著作はこれまでなかったようである。本書はおそらくその最初の単著であろう。この作品を「大きなアイデアに関するささやかな著作(Little Book on a Big Idea)」と自ら称しているが、それは本書が嚆矢となるはずのシリーズを今後予定しており、そのシリーズの名称がLittle Books on Big Ideasであるからである。

目次

  • 序章 農業変化の政治経済学
    • 全体の状況:農耕と世界の人口
    • 今日、農民とは誰のことか?
    • マルクスの政治経済学
  • 第1章 生産と生産性
    • 労働と自然
    • 分業と協業
    • 再生産
    • 剰余、搾取、蓄積
    • 政治経済学:4つの基本的な問い
  • 第2章 資本主義の起源と初期の発展
    • 資本主義の特徴とは
    • 資本主義の起源1:農業移行の道
    • 資本主義の起源2:商業資本主義がたどった長い道のり
    • 理論と歴史:複雑さ
  • 第3章 植民地主義と資本主義
    • 植民地主義の諸段階
    • 植民地主義と農業変化
    • 植民地体制下の労働レジーム
  • 第4章 農耕と農業、ローカルとグローバル
    • 農耕から農業へ
    • 「自然のメトロポリス」と第1次国際フードレジーム(1870年代-1914年)
    • 自由貿易から保護主義へ(1914年-1940年代)
    • 第2次国際フードレジーム(1940年代-70年代)
    • 開発主義の時代の農業の近代化(1950年代-1970年代)
    • 結論
  • 第5章 新自由主義的グローバリゼーションと世界農業
    • 第2次国際フードレジームの崩壊
    • 新自由主義の時代のグローバル農業
    • 開発主義の終焉
    • 小農の消滅?
  • 第6章 資本主義的農業と非資本家的農民?
    • 資本主義的農耕に対する「障害」
    • 搾取:資本と比べた場合の「家族農業」の強み
    • 抵抗が果たす役割
    • 結論
  • 第7章 農村における階級形成
    • 「家族農業」の階級的ダイナミクス
    • 労働者階級
    • 結論
  • 第8章 階級の複雑さ
    • 経済社会学と政治社会学
    • 農村における階級闘争
    • 「大地の人々」
    • 結論
  • 訳者あとがき
  • 文献表
  • 索引

監訳者

渡辺雅男(わたなべ・まさお)

一橋大学社会学研究科教授・社会学博士

著書
  • 『階級!社会認識の概念装置』(彩流社,2004年)
  • 『市民社会と福祉国家』(昭和堂,2007年)
  • ほか
訳書

訳者

松岡浩平(まつおか・こうへい)

一橋大学社会学部学士課程修了、民間会社勤務


山岸拓也(やまぎし・たくや)

一橋大学大学院社会学修士課程在学