貧困社会ニッポンの断層 森岡孝二編

企業社会の果てに貧困社会になった日本。広がる貧困の諸相を問い、亀裂を深める日本社会の断層とそこから露呈する日本経済の深層を抉る!
- 四六判/上製/288頁
- ISBN978-4-905261-07-0
- 本体2700円+税
- 初刷:2012年4月5日
- 第2刷:2012年6月25日
編者の言葉
目次
- はしがき(森岡孝二)
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第1章 企業社会の行き着いた果てに(森岡孝二)
--貧困社会ニッポンの出現--- はじめに
- 1 企業社会の成立と正社員の働き方
- 2 企業社会の成立とストライキの激減
- 3 企業社会の行き着いた果ての貧困社会
- 4 大地震・原発災害にみる日本社会の構図
- むすびにかえて
-
第2章 人材派遣業の膨張・収縮と経営実態(高田好章)
--近年の製造派遣を中心に--- はじめに
- 1 製造派遣による人材派遣業の驚異的な伸び
- 2 人件費の流動化と労働力の需給調整
- 3 「派遣切り」にみる労働ダンピング
- 4 派遣会社の経営実態と違法体質
- 5 人材派遣正当化論批判
- おわりに
-
第3章 パートタイム労働市場と女性雇用(中野裕史)
- はじめに
- 1 雇用の非正規化とパート化
- 2 女性の就業選択とパートへの誘引
- 3 パートタイム労働者の賃金格差と性差別
- 4 日本のパートタイム労働をどう改革するか?
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第4章 法人実効税率引下げ論の虚構と現実(大邊誠一)
- はじめに
- 1 大企業の法人税負担の実態
- 2 経団連の税制改正要求の内容
- 3 企業の海外進出の実際
- 4 グローバル化と大企業の社会的責任
- おわりに
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第5章 グローバル化と中小企業における雇用破壊(小野 満)
- はじめに
- 1 日本企業のグローバル化の進展
- 2 生産の海外移転とその影響
- 3 中小企業における雇用の変遷
- 4 雇用を確保して経済の循環を
-
第6章 持家社会の居住貧困と住宅ローン問題(島嘉巳)
- はじめに
- 1 多様化する居住貧困のなかの持家志向
- 2 住宅ローン:持家ドリームへの架橋
- 3 住宅ローン普及と累積による諸結果
- 4 まとめと展望
-
第7章 生活保護制度の現状とナショナルミニマム(川口民記)
- はじめに
- 1 生活保護制度を取り巻く状況
- 2 ワーキングプアと生活保護制度
- 3 自立支援プログラムの動向と課題
- おわりに
-
第8章 労働CSRと格差・貧困(高橋邦太郎)
- はじめに
- 1 雇用と労働の現状
- 2 「企業の社会的責任」と企業統治
- 3 持続的発展のための労働CSR
- 4 国際的な労働CSR論の展開
- 5 労働運動と労働CSR
- おわりに
編者
森岡孝二(もりおか・こうじ)
- 1944年3月24日 大分県大野郡大野町(現在・豊後大野市)に生れる
- 1962年4月 香川大学経済学部に入学
- 1966年3月 香川大学経済学部を卒業
- 1966年4月 京都大学大学院経済学研究科に入学
- 1969年9月 京都大学大学院経済学研究科博士課程を退学
- 1969年10月 大阪外国語大学助手、のち講師
- 1974年4月 関西大学経済学部講師
- 1976年4月 関西大学経済学部助教授
- 1983年4月 関西大学経済学部教授
- 1986年6月〜1992年7月 基礎経済科学研究所理事長
- 1996年2月 〜2014年8月 株主オンブズマン代表
- 1998年4月 〜2001年3月 経済理論学会代表幹事
- 2004年10月 〜2006年9月 関西大学経済学部長
- 2006年9月〜2013年7月 働き方ネット大阪会長
- 2010年3月〜2018年8月 大阪過労死問題連絡会会長
- 2011年3月 関西大学を定年退職
- 2011年4月 関西大学名誉教授,引き続き特任契約教授として教鞭をとる
- 2013年7月〜2018年8月 NPO法人働き方ASU-NET代表理事
- 2014年3月 関西大学を退職
- 2015年5月〜2018年6月 過労死防止学会代表幹事
- 2018年8月1日 死去
- 『独占資本主義の解明:予備的研究』(新評論,1979年(増補新版1987年))
- 『現代資本主義分析と独占理論』(青木書店,1982年)
- 『企業中心社会の時間構造:生活摩擦の経済学』(青木書店,1995年)
- 『日本経済の選択:企業のあり方を問う』(桜井書店,2000年)
- 『働きすぎの時代』(岩波新書,2005年)
- 『貧困化するホワイトカラー』(ちくま新書,2009年)
- 『強欲資本主義の時代とその終焉』(桜井書店,2010年)
- 『就職とは何か:まともな働き方の条件』(岩波新書,2011年)
- 『過労死は何を告発しているか:現代日本の企業と労働』(岩波現代文庫,2013年)
- 『教職みちくさ道中記』(桜井書店,2014年)
- 『雇用身分社会』(岩波新書,2015年)
- J.B.ショア『働きすぎのアメリカ人:予期せぬ余暇の減少』(窓社,1993年)
- J.B.ショア『浪費するアメリカ人:なぜ要らないものまで欲しがるのか』(岩波書店,1993年)
- J.A.フレーザー『窒息するオフィス 仕事に脅迫されるアメリカ人』(岩波書店,2003年)
- J.M.ホジソン『経済学とユートピア』(ミネルヴァ書房,2004年)
- D.K.シプラー『ワーキング・プア:アメリカの下層社会』(岩波書店,2007年)
- J・B・ショア著『プレニテュード:新しい〈豊かさ〉の経済学』(監訳)(岩波書店,2011年)
執筆者
- 森岡孝二(はしがき、第1章)
- 高田好章(第2章)1950年生まれ,化学会社勤務
- 中野裕史(第3章)1981年生まれ,関西大学マイノリティ研究センターRA研究員
- 大邊誠一(第4章)1950年生まれ,税理士
- 小野 満(第5章)1932年生まれ,元繊維会社勤務
- 島嘉巳(第6章)1935年生まれ,不動産鑑定士
- 川口民記(第7章)1949年生まれ,施設管理会社勤務
本書は貧困問題に焦点を合わせて、亀裂を深める日本社会の断層とそこから露呈する日本経済の深層を考察することを課題としている。格差の拡大はおのずと貧困の拡大をともなう。その点では、本書は先にほぼ同じ執筆者たちが著した『格差社会の構造--グローバル資本主義の断層』(桜井書店、2007年)の続編である。
前書も随所で日本社会における「格差と貧困の拡大」に論及している。しかし、貧困問題の立ち入った考察は次の課題として残されていた。前書から本書まで5年近く経過するあいだに、日本社会は「貧困」あるいは「貧困化」をキーワードに語られることがますます多くなってきた。それにともない、これまでは見えなかったか隠されてきた貧困の諸相が露わになり、本書で行ったような考察が要請されるようになった。