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強欲資本主義の時代とその終焉  森岡孝二著
強欲資本主義の時代とその終焉

「強欲資本主義」と化した現代資本主義の"現代性"と"多面性"を労働と消費の視点から明らかにしポスト新自由主義の新しい経済社会を探求する!

四六判/上製/392頁
ISBN978-4-921190-64-4
本体2800円+税
発行
初刷:2010年4月15日
第2刷:2011年5月20日

著者の言葉

この30年余りのあいだに資本主義は大きく変化してきた。とくに新自由主義の政策イデオロギーが現実政治に浸透した国々では,金融と雇用の規制緩和が進み,それがアメリカ主導のグローバリゼーションと交錯して,ファンドマネーが世界を駆け巡る「株主資本主義」の時代が出現した。それとともに戦後長らく続いてきた安定的な雇用関係が崩壊し,労働者の状態はまるで19世紀に逆戻りしたかのように悪化した。

序章ではこうして出現した時代を「強欲資本主義」と呼んだ。この名辞は便宜的なものであって,広く用いられている「グローバル資本主義」,あるいはロバート・ライシュのいう「超資本主義」と言い換えてもよい。リチャード・セネットは,このような変化を念頭において,資本主義は包摂と安定を重視したかつての「社会資本主義」から雇用不安につきまとわれる「新資本主義」に移行したと述べている。これもまた現代資本主義の一つのネーミングである。

強欲資本主義の時代はそれが完成に近づいたと思われたときに,終焉のときを迎えた。その画期は,アメリカのバブル崩壊を引き金とする2008年世界恐慌である。この恐慌は規制緩和の2大領域であった金融と雇用の崩壊であった点で,新自由主義の破局を意味している。また,アメリカのオバマ政権や,日本の鳩山政権の誕生は,ほぼ30年来の新自由主義の中心国における歴史的な政権交代である点で,世界的な政治潮流の転換を示唆している。

現在生じているのは金融と雇用の崩壊であるという事実から考えて,これから始まる新しい時代は,政府が金融市場を含む市場経済への介入を強め,雇用・労働分野における社会的な保護と規制を再建する方向に進まざるをえないだろう。とはいえ,資本主義のゆくえは,社会のなかの諸階級間および諸集団間の抗争と,人々の政治的選択に左右されるところが大きい。それゆえに資本主義のゆくえを考えようとすれば,将来の望ましい社会システムを展望した近未来の経済社会のあり方を問わなければならない。

目次
  • 序章 現代とはどんな時代なのか
    • はじめに-二つの映画から
    • 第1節 新自由主義とグローバリゼーション
    • 第2節 2008年世界恐慌とその衝撃
    • 第3節 新自由主義の終焉と世界の政治経済の転換
    • おわりに
  • 第1部 現代資本主義の全体像と時代相
    • 第1章 現代資本主義論争によせて
      • はじめに
      • 第1節 資本主義の「いつ」と「なに」を論ずるか
      • 第2節 北原勇氏の「20世紀末資本主義」の分析
      • 第3節 伊藤誠氏の「逆流仮説」の意味するもの
      • 第4節 山田鋭夫氏の「レギュラシオン・アプローチ」
      • おわりに
    • 第2章 現代資本主義の現代性と多面性
      • はじめに
      • 第1節 資本主義の発展・変化と現代資本主義
      • 第2節 現代資本主義の多面的諸相
      • 第3節 現代資本主義の「変質」論とその狭隘性--井村喜代子氏の所説をめぐって
      • 第4節 現代資本主義の全体像と資本主義の原理像
      • おわりに
    • 第3章 雇用関係の変容と市場個人主義
      • はじめに
      • 第1節 市場・資本主義・市場個人主義
      • 第2節 時短の時代から働きすぎの時代へ
      • 第3節 雇用形態の多様化と雇用の不安定化
      • 第4節 日本における労働の規制緩和と市場個人主義
      • おわりに
    • 第4章 株主資本主義と派遣切り
      • はじめに
      • 第1節 株主資本主義とコーポレート・ガバナンス
      • 第2節 「戦後最長の景気拡大」と労働分配率の低下
      • 第3節 2008年恐慌における製造業の生産の落ち込みと派遣切り
      • おわりに
  • 第2部 日本経済と雇用・労働
    • 第5章 バブルの発生・崩壊と1990年代不況
      • はじめに
      • 第1節 バブル発生の環境と要因
      • 第2節 バブルを生んだ銀行・企業行動と不良債権問題
      • 第3節 バブルの崩壊と不良債権問題
      • 第4節 不況のなかの生産・雇用・消費
      • 第5節 日本的経営システム変容と2つの神話
      • おわりに
    • 第6章 悪化する労働環境と企業の社会的責任
      • はじめに
      • 第1節 見せかけの時短と働きすぎの実態
      • 第2節 非正規雇用の増大と派遣労働者
      • おわりにかえて --株価至上主義経営と企業の社会的責任
    • 第7章 労務コンプライアンスとサービス残業
      • はじめに
      • 第1節 1980年代以降の労働時間の推移
      • 第2節 サービス残業時間の把握の困難とその推計
      • 第3節 サービス残業の実態と不払賃金総額
      • 第4節 労働基準行政とサービス残業
      • おわりに
    • 第8章 非正規労働者の増大と貧困の拡大
      • はじめに
      • 第1節 相対的貧困率ワースト2
      • 第2節 ホワイトカラーの非正規労働者化と貧困化
      • 第3節 ノンフィクションに見るワーキングプアの労働と生活
      • おわりに
    • 終章 新しい経済社会のあり方を求めて
      • はじめに
      • 第1節 ソ連型社会主義の崩壊からなにを学ぶか
      • 第2節 株式会社をいかに改革するか
      • 第3節 人間らしく働くために
      • おわりに
  • あとがき
    • 事項索引
    • 人名索引
    • 参考文献
著者
森岡孝二(もりおか・こうじ)

1944年,大分県に生まれる。
香川大学経済学部を卒業後,京都大学大学院経済学研究科に進む。
同博士課程を中退し,大阪外国語大学助手を経て,
現在,関西大学経済学部教授,経済学博士(京都大学)。
株式オンブズマン代表・大阪過労死問題連絡会会長。

著書
  • 『独占資本主義の解明:予備的研究』(新評論,1979年(増補新版1987年))
  • 『現代資本主義分析と独占理論』(青木書店,1982年)
  • 『企業中心社会の時間構造:生活摩擦の経済学』(青木書店,1995年)
  • 『日本経済の選択:企業のあり方を問う』(桜井書店,2000年)
  • 『働きすぎの時代』(岩波新書,2005年)
  • 『貧困化するホワイトカラー』(ちくま新書,2009年)
  • 『強欲資本主義の時代とその終焉』(桜井書店,2010年)
  • 『就職とは何か:まともな働き方の条件』(岩波新書,2011年)
共訳書
  • J.B.ショア『働きすぎのアメリカ人:予期せぬ余暇の減少』(窓社,1993年)
  • J.B.ショア『浪費するアメリカ人:なぜ要らないものまで欲しがるのか』(岩波書店,1993年)
  • J.A.フレーザー『窒息するオフィス 仕事に脅迫されるアメリカ人』(岩波書店,2003年)
  • J.M.ホジソン『経済学とユートピア』(ミネルヴァ書房,2004年)
  • D.K.シプラー『ワーキング・プア:アメリカの下層社会』(岩波書店,2007年)
  • J・B・ショア著『プレニテュード:新しい〈豊かさ〉の経済学』(監訳)(岩波書店,2011年)