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おとなが子どもと出会うとき 子どもが世界を立ちあげるとき-教師のしごと  竹内常一著
おとなが子どもと出会うとき 子どもが世界を立ちあげるとき-教師のしごと

子どもが生きている世界に身を差し入れ
子どもと共にその世界を織りなした現場の教師たちの試みのなかへ

四六判/上製/200頁
ISBN4-921190-23-2
本体1800円+税
発行
初刷:2003年6月20日
第2刷:2006年5月1日
第3刷:2007年11月15日

著者の言葉

いまは「教育」という仕事がおそろしく成り立ちがたい時代である。「教育」が成り立ちがたいということは、子ども世代とおとな世代、教師と子ども、子どもと子ども、そして子どもと世界の関係がズタズタに断ち切られているということである。そのために、さまざまな行動をつうじて発している子どもたちのSOSがおとなや教師に聞き取られないでいる。

それどころか、「荒れる子ども」といわれ、「新しい荒れが子どもたちを襲っている」といわれる。そのために、学級が崩壊し、学校が解体の危機にあるといわれる。だから、教育基本法を改正し、「統治としての教育」を構築しなければならないと強弁される。

だが、そのようなことでは「教育」の成り立ちがたさを越えていくことができない。「教育」を成り立たせる関係性を子どもとともに再構築する以外にそれを越えていく道はない。

本書は、子どもがおとな(教師)と出会い自分を取り戻すとき、また子どもが身を起こして世界を立ちあげるときを教師たちの記録のなかに求めたものである。いいかえれば、教育というよりは、相互教育が子どもとおとな(教師)のあいだに成り立つときを記録のなかに探し求めたものである。その意味では、本書は、「学級崩壊から教育基本法改正へ」という流れに抗して、「子どものSOSから教育基本法へ」と遡行していった教師たちの試みを取り上げたものであるともいうことができる。

そのような思いをこめて、本書のタイトルを『おとなが子どもと出会うとき 子どもが世界を立ちあげるとき』とし、副題を「教師のしごと」とした。この小著がきっかけになって、多くの人々が教育の成り立ちがたさを嘆くのではなく、教育という仕事を思想的に語り合うことができるようになることを願う。

目次
  • はじめに
  • 第1章 子どもの世界を生きる
    1. 子どもの世界に身を差し入れる
    2. 教師のからだと視線と想像力
    3. 子どもが他者にことばを発するとき
    4. 子どもが他者とつながるとき
  • 第2章 意味ある経験を生みだす
    1. 300円のタマゴと500円のタマゴ
    2. 身体を介してものや世界と交流する
    3. 自分と世界の関わりが見えてくる
    4. 友だちとつながって世界を立ちあげる
    第3章 差異の承認と共通性の追求
    1. 一平と丸福とつよし
    2. 「二者関係」から「三者関係」へ
    3. 子どものなかの「三者関係」
    4. 差異の承認と共通性の追求
  • 第4章 他者と出会い、自分を取り返す
    1. 暴力・断裂から自立・共存へ
    2. 隼人という中学生
    3. 他者と出会い、自分を取り返す
    4. 自分と出会い、他者とつながる
  • 第5章 友だちのいるクラス
    1. 田所学級の子どもたちの文章
    2. 身体的・言語的なコミュニケーション世界を開く
    3. 言語的コミュニケーションを開く班ノートと通信
    4. いじめ体験を語り・聞く
    5. 「ケアと応答の文化」から「対話の文化」へ
  • 第6章 物語の交響するクラス
    1. 「北の十字架(クルス)」と「祥子と『是信房といた夏』」
    2. 地域の物語を生きる子どもたち
    3. 自分の物語を語りだす子どもたち
    4. マクロの物語とミクロの物語
    5. 物語の交響するクラス
  • 第7章 学級づくりから子ども集団づくりの方へ
    1. 学級の集団的構造
    2. A地区の子どもたちにもイニシアティブを
    3. 子どものグループづくりと友だちさがし
    4. ぼくらの「学校づくり」と「地域拠点づくり」
    5. 子ども集団づくりの方へ
    6. 支配の装置としての「学級」の問いなおし
  • 第8章 「奉仕活動」から「ボランティア活動」へ
    1. 東海豪雨水害ボランティア
    2. 地域の「共同」を支援する
    3. 「現地に行くこと」と「他者と共にあること」
    4. 「共同の世界」を編みなおすこと
    5. 子どもはボランティアのなかでなにを学んだか
  • 第9章 校内暴力から「つっぱり学習会」へ
    1. 校内暴力のなかで
    2. 荒れる子どもたちと学校
    3. 子どもの言い分に共感する
    4. 「つっぱり学習会」へ
  • 第10章 学校のなかにもうひとつの学校をつくる
    1. 管理主義の学校のなかで
    2. 「競争・団結の文化」から「反差別・連帯の文化」へ
    3. 学校の時空間を再編成する
    4. 学びから参加へ
  • 補論 教育実践は過ちを重ねながら、正しさをつらぬくものである
    1. 全生研の面白さは実践記録の分析にある
    2. 実践の創造性-判断こそ実践成立の要件
    3. 教育実践とはなにか-実践では過ちは不可避である
    4. 実践記録とはなにか-なぜ実践を記録するのか
    5. 教育実践の分析とはなにか-実践の誤りを乗り越える
  • あとがき
著者
竹内常一(たけうち・つねかず)

1935年生まれ
1960年 東京大学大学院修士課程修了
現在,國學院大學名誉教授
日本生活指導学会代表理事

著書