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マルクスの資本主義  重田澄男
マルクスの資本主義

模索と決断

<資本主義の発見>から「資本制生産様式」の概念と用語の確立にいたるマルクスの思索の過程からは何が見えてくるか。

著者のライフワークを集大成

A5判/上製/258頁
ISBN4-921190-34-8
本体3800円+税
発行
初刷:2006年4月25日

著者の言葉

マルクスの資本主義概念の生成と展開と転生(生まれ変わり)は、ミステリーとドラマに満ちている。

『資本論』における資本主義概念は、「資本主義Kapitalismus」ではなくて「資本制生産kapitalistische Produktion」と「資本制生産様式kapitalistische Produktionsweise」という用語によって示されているものである。

ところが、この「資本制生産様式」といった資本主義概念を表現する用語は、初期マルクスどころか、中期マルクスにおいても存在していない。それは1860年前後に『資本論』への取り組みの準備をおこなうなかでマルクスによってつくられ、使われるようになったものである。そして、その「資本制生産様式」が、『資本論』第1部(1867年)においては、基軸的なキイ・カテゴリーとして使われているのである。

それ以前の時期には、『哲学の貧困』(1847年)や『共産党宣言』(1848年)や『賃労働と資本』(1849年)や、さらには、『経済学批判』(1859年)などにおいても、資本主義概念は、「資本制生産様式」という用語としてではなくて、フランス語形で「ブルジョア的生産la production bourgeoise」など、ドイツ語形では「ブルジョア的生産様式gerliche Produktionsweise」といった用語によって表現されていたのである。

そのように、公刊されていた著書のなかで10年ものあいだ使用しつづけてきた「ブルジョア的生産様式」という資本主義用語の使用をとりやめて、マルクスはどうして「資本制生産様式」という用語にとりかえなければならなかったのか。

本書の中心課題は、資本主義概念が、なぜ、このような「ブルジョア的生産様式」という用語から「資本制生産様式」という用語に生まれ変わらねばならなかったのか、というミステリーの謎解きである。この謎解きによって、マルクスの資本主義概念と用語の転生のドラマが明らかになってくる。

そのような資本主義用語の「資本制生産様式」への転生という謎を解き明かす環となっている著作は、ロンドン亡命後にマルクスが取り組んだ膨大な読書にもとづく『ロンドン・ノート』のあとに書きあげられた『経済学批判要綱』(1857〜58年)である。   

目次
  • はしがき
  • 序 章
  • 第1章 ヨーロッパ時代
    • 第1節 初期マルクス
    • 第2節 『賃労働と資本』
  • 第2章 前史としての『ロンドン・ノート』
    • 第1節 1850年代のマルクス
    • 第2節 『ロンドン・ノート』の内容
    • 第3節 準備草稿や抜粋の再整理
  • 第3章 貨幣章の導入による『経済学批判要綱』の着想
    • 第1節 『経済学批判要綱』の構成
    • 第2節 『経済学批判要綱』はいつ始められたのか?
    • 第3節 「貨幣にかんする章」
  • 第4章 資本の理論
    • 第1節「資本にかんする章」とその構成
    • 第2節「資本にかんする章」の内容
    • 第3節 いくつかの問題
  • 第5章 転生へのマルクスの決断-資本主義用語の転換への模索-
    • 第1節 「資本にもとづく生産様式」用語
    • 第2節 資本主義用語の転生への試み
  • 第6章 『経済学批判』
  • 第7章 資本主義用語の転生-1859〜61年における確定-
    • 第1節 『経済学批判』後の取り組みと「資本制生産様式」用語の確定
    • 第2節 1859〜61年における執筆諸資料の執筆順序・時期と「資本制生産様式」用語
    • 第3節 確定された「資本制生産様式」用語
  • 第8章 「資本制生産様式」の全面的使用-『1861-63年草稿』と『資本論』-
    • 第1節 『1861-63年草稿』
    • 第2節 『資本論』
  • 第9章 マルクスの資本主義概念-「資本制生産」と「資本制生産様式」-
    • 第1節 マルクスの資本主義概念
    • 第2節 「資本制生産」と「資本制生産様式」
  • 終章 現代社会と資本主義概念
    • 第1節 自由競争の阻害と資本主義概念
    • 第2節 多様な現代資本主義と資本主義概念
  • あとがき
  • 事項索引
  • 人名索引
著者
重田澄男(しげた・すみお)

1931年生まれ。
1954年,京都大学経済学部卒業。
静岡大学名誉教授・岐阜経済大学名誉教授。経済学博士。

著書
  • 『マルクス経済学方法論』(有斐閣,1975年)
  • 『資本主義の発見』(御茶の水書房,1983年)
  • 『資本主義と失業問題─相対的過剰人口論争』(御茶の水書房,1990年)
  • 『社会主義システムの挫折─東欧・ソ連崩壊の意味するもの』(大月書店,1994年)
  • 『資本主義とはなにか』(青木書店,1998年)
  • 『資本主義を見つけたのは誰か』(桜井書店,2002年)
  • 『マルクスの資本主義』(桜井書店,2006年)