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資本主義を見つけたのは誰か  重田澄男著
資本主義を見つけたのは誰か

いつ・誰が「資本主義」と名づけたか?

近代社会のキー・ワードとしての「資本主義」語の変遷を追跡して,資本主義認識の深化の過程をたどるユニークな経済理論史

マルクスは資本主義を「資本主義」とは呼ばなかった?!
Who discovered "Capitalism"?

A5判/上製/312頁
ISBN4-921190-15-1
本体3500円+税
発行
初刷:2002年4月5日

著者の言葉

本書は、「資本主義」という用語の発生とその移りゆきを追跡したものである。

現在、われわれは、きわめてポピュラーな日常語として「資本主義」というコトバを使っており、しかも、この「資本主義」というコトバは、日常語としてだけでなくて、時論的な現実理解においても、実証的な現実分析においても、さらには、理論的な経済学的解明においても使われているものである。

この「資本主義」という用語の発生と受容と展開をめぐる<<時>>と<<人>>と<<言葉>>のかかわりには、ミステリーとドラマがある。

そもそも「資本主義」という用語を初めて使ったのは誰か。「資本主義」という用語は、どのような時代状況のなかで、誰によって、いかに生みだされたものであるのか。このことについてさえ、現在までのところ国際的な定説が確立しているとは思えない。

しかも、1850年前後の時期に使われはじめるようになった「資本主義」という用語は、けっして現在われわれが使っているような近代社会の経済システムを示すという意味をもつものではなかった。

それが、1870年以後になると、「資本主義」という用語は、現在われわれが使っているような近代社会の経済体制を表現するものとして使われるようになっている。だが、それは、いかなる過程のなかで、誰によって、いかにしておこなわれることになったものであるのか。

同じ「資本主義」という<<言葉>>が、<<時>>が移り時代状況が変遷していくなかで、新たな問題意識をもった別の<<人>>によって、新たな意味内容をもった用語として使われるようになってくる。その移りゆきには、時代変遷のなかでの<<時>>と<<人>>と<<言葉>>の絡みあったドラマの展開がある。

それだけではない。「資本主義」という用語を使っている人それぞれにおいても、新しい<<時代>>状況のなかで、新しい問題意識や思想にもとづいて時代を表現しようとした<<人>>が、用語としての「資本主義」という<<言葉>>をいかにして使うか、あるいは使わないか。同じ人物の著書においても、初版と改訂増補版とでは、「資本主義」用語の使い方の転換が生じているのである。

しかも、奇妙なことに、そのような「資本主義」という用語の発生と受容と展開のドラマのなかで、「資本主義」という用語を使っていないマルクスの『資本論』が、「資本主義」という用語の意味内容の転換をひきおこすというミステリアスな触媒の役割を果たしているのだ。

(中略)

そのようなさまざまなミステリーを解きあかしながら、「資本主義」という用語の紡いできたドラマをたどっていくことによって、現在では過剰なほどに使われるようになっている近代社会のキー・ワードとしての「資本主義」という言葉の使い方とその意味内容を明らかにしていくこと、それが本書のテーマである。

目次
  • はしがき
  • 序 章  「資本主義」用語を使いはじめたのは誰か?
  • 第1部  「資本主義」語のはじまり 19世紀前半の時代状況
    • 第1章  「資本主義」語も「社会主義」語も--ピエール・ルルー
    • 第2章  生産手段の排他的専有--ルイ・ブラン
    • 第3章  ブルジョア的気分--サッカレー
    • 第4章  どん欲な資本家--ブランキ
    • 第5章  使われはじめの時期の「資本主義」語
  • 第2部  「資本主義」語なきマルクス
    • 第6章  マルクスと「資本主義」語
    • 第7章  マルクスにおける資本主義認識
  • 第3部  「資本主義」用語の継承と変容 19世紀後半の時代状況
    • 第8章  国民経済における結合形態--シェフレ
    • 第9章  機械制産業--ホブソン
    • 第10章  資本家的精神による経済体制--ゾンバルト
    • 終章  「資本主義」用語の変遷
  • あとがき
  • 参考文献索引(欧文)
  • 参考文献索引(和文)
  • 人名索引
  • 事項索引
著者
重田澄男(しげた・すみお)

1931年生まれ。
1954年,京都大学経済学部卒業。
静岡大学名誉教授・岐阜経済大学名誉教授。経済学博士。

著書
  • 『マルクス経済学方法論』(有斐閣,1975年)
  • 『資本主義の発見』(御茶の水書房,1983年)
  • 『資本主義と失業問題─相対的過剰人口論争』(御茶の水書房,1990年)
  • 『社会主義システムの挫折─東欧・ソ連崩壊の意味するもの』(大月書店,1994年)
  • 『資本主義とはなにか』(青木書店,1998年)
  • 『資本主義を見つけたのは誰か』(桜井書店,2002年)
  • 『マルクスの資本主義』(桜井書店,2006年)