- 季刊・経済理論 第58巻第1号(2021年4月)特集◎少子化と現代資本主義
- 目次
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[特集◎少子化と現代資本主義]
- 少子化要因分析の視点:資本主義機能不全としての少子化 溝口由己
- 少子化の歴史的位相と日本の特性 宮嵜晃臣
- 人口を〈再生産〉するということ:人口減少と資本蓄積 勝村 務
[論文]
- 環境税が需要形成に与える効果:汚染排出を考慮したポスト・ケインズ派モデルによる分析 安藤順彦
- 戦後アメリカの経済成長率の長期低落傾向と産業構造の再編 平野 健
- 欲求体系の歴史的理論 高晨曦
[研究ノート]
- 政治変革における「中間層」の独自な重要性について:大西(2018)社会運動モデルへの非対称性の導入 大西 広
[書評]
- 鍋島直樹著『現代の政治経済学:マルクスとケインズの総合』 二宮健史郎
- 鳥居伸好著『なるほどマル経:時の流れを読む経済学』 金江 亮
- 長尾伸一・梅澤直樹・平野嘉孝・松嶋敦茂編『現代経済学史の射程:パラダイムとウェルビーイング』 若森章孝
[書評へのリプライ]
- 『経済と法の原理論:宇野弘蔵の法律学』に対する新田滋氏の書評へのリプライ 青木孝平
経済理論学会第68回大会報告
経済理論学会第68回大会報告(英文)
経済理論学会第68回大会分科会報告
経済理論学会 2020年度会務報告 代表幹事 河村哲二
第11回(2020年度)経済理論学会奨励賞 奨励賞選考委員会
第12回(2021年度)経済理論学会奨励賞募集要項 奨励賞選考委員会
第6回(2019年度)経済理論学会ラウトレッジ国際賞 国際賞選考委員会
第8回(2021年度)経済理論学会ラウトレッジ国際賞推薦依頼 国際賞選考委員会
2021年度 経済理論学会第69回大会の開催について 大会準備委員会
論文の要約(英文)
刊行趣意・投稿規程
編集後記 星野富一
- 編集後記
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本号は、2020年度の経済理論学会第68回大会の特集号である。当初、第68回大会は北星学園大学において開催の予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、オンラインによる開催に変更された。パンデミックという困難な状況下においても、大会が中止されることなく、新しい形で成功裏に開催することができたのは、関係する多くの方々のご尽力のたまものである。報告者、司会者、大会主催者、学会幹事および代表幹事の方々には、この場を借りて心より御礼申し上げたい。
第68回大会の共通論題は「少子化と現代資本主義」であった。現代資本主義の下で進行する少子化が、体制の存続を危うくしているという問題意識のもと、実証的および理論的な報告が行われ、白熱した議論が展開された。考えてみれば、人口減少は、資本蓄積を制約する重大な要因である。ところが、過去の大会の共通論題をみると、少子化や人口規模を取り上げた大会はない。そこには、マルクス蓄積論の問題関心が関係しているのではないか。もともとマルクスの資本主義的人口法則論は、資本蓄積との関係で相対的過剰人口を重視する理論構成をとり、絶対的な人口の変化は与件とする傾向があった。従来は理論的に取り扱われてこなかった人口規模の問題が、現実の生活の中で深刻な危機をもたらすようになり、理論的焦点として浮上しているのである。
2021年度の第69回大会は、対面を基本としつつ、オンラインでも参加可能とするハイブリッドな形態での開催が予定されている。その共通論題は、「コロナ禍と現代資本主義」である。現在、コロナ・パンデミックは、人々の生活に大きな困難をもたらしながら、社会のあり方を大きく変容させつつある。それは資本主義そのものに起因する問題とはいえないかもしれない。とはいえ、それは人間と自然の物質代謝のなかで行われる生命の再生産に深くかかわり、そのことによって社会的再生産に大きな影響を及ぼす問題となっている。共通論題には各時代の問題意識が現れるが、第68回大会と第69回大会の共通論題をみると、生命の再生産との関係のなかで資本主義に現れる困難が、時代の問題として強く意識されるようになっている。それを受け、経済理論の焦点も変化していく可能性がある。
(宮澤和敏)
- 編集委員
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委員長
- 宮澤和敏(広島大学)
副委員長
- 鍋島直樹(名古屋大学)
編集委員
- 阿部太郎(名古屋学院大学)
- 柴崎慎也(北星学園大学)
- 田添篤史(三重短期大学)
- 羽島有紀(駒澤大学)
- 星野富一(富山大学)
- 森本壮亮(立教大学)
- 吉田博之(日本大学)
- 涌井秀行(明治学院大学)
経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。