第44巻の編集委員長を務めさせていただきます屋嘉宗彦(やか・むねひこ。法政大学・法学部)です。1年間よろしくお願いいたします。前々回の43巻3号でも編集後記を書きましたが,そのときは松本朗編集委員の仕事ぶりを傍から眺めて,幾分,他所事のように書くことができました。今回,この44巻1号の編集作業を自分でやってみて,改めてつくづく感じたのは,会員諸氏の協力の重みでした。投稿論文の審査という地味な,しかし機関誌の核心となる作業を多くの会員が淡々と引き受けて,真摯な評価を提出して下さることや,特集や書評の執筆依頼に応えてくださる姿は,力を結集して政治経済学をつくり上げていくという使命感のようなものさえ感じられます。利己心と競争を旗印にして進むデジャブー資本主義とそれの惹き起こす諸問題に正面から取り組もうとするこの学会の姿勢を改めて認識しました。
編集委員会は,これまでも編集に関連して,会員から提起された問題や編集委員から提起される問題に対応して種々の改革を実施してきました。その点に関連して皆様にお伝えしたいことがいくつかあります。
一つは,今回,書評に関する投稿規程を変更したことです。従来の投稿書評制度を廃して,書評で取り上げるべき書籍と評者について広く会員諸氏からご意見をお寄せいただき,その上で編集委員会での検討を経て評者に依頼する,という制度に変えました。投稿を待つ,あるいは編集委員会だけで書籍を選定し評者を決定していくというのではなく,広く会員の意見・希望を反映した書評制度にしたいというのがその趣旨です。どうぞ,自薦・他薦にかかわらず広くご希望を下記記載の編集委員長アドレスまでお寄せ下さるようお願いいたします。
つぎに,前号の編集後記で吉原編集委員が提起している問題の一つに関連することですが,従来,編集委員になったものは,その任期中,投稿ができないという規定であったのを改めて,投稿を可とし,学会幹事会のなかに「特別編集委員会」を設置して現編集委員の投稿論文を審査する体制をつくったことです。この制度は,前号編集後記が書かれる以前に発足しています。吉原委員が提起しているその他の問題,特にレフェリー・プールの拡張の問題は,これまでも等閑視されてきたわけではなく,とくに数理的展開を含む論文の増加に関連して編集委員会では中期的あるいは長期的に検討すべき課題と認識されているものです。また,レフェリー・プロセスに関しては,見解の違いから評価に差異が出るといったものにならないよう,評価項目自体が客観的に把握できるものに限定されています。そして,吉原委員の想定どおりこれまで見識ある審査がなされてきております。
もう一つは,制度というより編集委員会内部での申し合わせに近いものですが,発足当初,掲載不可となった投稿論文については理由を付さずに結論だけを通知するというものであったのを,ケースによっては不掲載の理由や今後の研究のために役立つとおもわれる審査評を添付して通知するという“配慮”をすることにしました。投稿した人にとっても,審査の労をとってくださった方にとっても,そのご努力を幾分でも生かすことができるようにしたいという趣旨です。
編集委員会は,学会幹事会と連携し,重要な方針については幹事会での討議・承認を経て活動していますが,まだ改善すべき点は多々あろうかと思われます。会員諸氏には,論文の投稿,特集テーマや書評でとりあげるべき本や評者についてご提案・ご執筆にご協力いただきますとともに,機関誌編集にかかわるご意見をも多様な経路でお寄せいただきますようお願いいたします。
(屋嘉宗彦)