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スウェーデンにみる個性重視社会─生活のセーフティネット

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四六判/上製/256頁

ISBN4-921190-16-X

二文字理明・伊藤正純編著
<執筆者>
二文字理明 大阪教育大学教育学部教授
泉 千勢 大阪府立大学社会福祉学部教授
善積京子 追手門学院大学人間学部教授
西下彰俊 金城学院大学現代文化学部教授
レグランド
塚口淑子
ストックホルム大学スウェーデン社会研究所研究員
伊藤正純 桃山学院大学教育研究所教授
後藤和子 埼玉大学経済学部助教授


 本体2500円
     +税


発行

初刷:2002.4.20
第2刷:2004.2.15


この国にはないもうひとつの社会

なぜこうも違うのか

「福祉国家」から「福祉社会」へ
自らを変化させつづける
「実験国家」スウェーデン
その最近事情を生活者の視点で報告する

編者の言葉

 

 地方分権の進展・規制緩和の徹底・競争原理の強化。これによって社会を活性化し、自由で創造的な社会を構築する。日本にもスウェーデンにも共通する現象である。日本が経済大国として世界に君臨するようになって久しい。しかし、なにゆえか、スウェーデンという福祉社会の基盤の安定感に比較して、日本における人々の生活の不安感は果てしなく大きく感じられる。都市部ではホームレスがますます増加。企業倒産の続出。若年から中年、高齢者にいたる失業率の増加等々。長期にわたる不況からくる疲弊感はいかんともしがたい。このようななかにあって、強者は、それなりに社会を勝ち抜いて生きていく道も見出せるのであろう。しかし、低所得者層、とりわけ高齢者、障害者、女性、失業者等、社会的弱者に陥りやすい人々にとって状況は過酷になるばかりにみえる。政治不信も重なって、希望へと向かう道は霧のなかである。このような日本の閉塞感からすればスウェーデン社会への関心はごく自然の感じがする。それが本書の出発点である。
 20世紀末、旧ソビエト連邦の崩壊後、アメリカを中心とする一極型社会の構築が進むなかにあって、福祉社会を目指して進んできたスウェーデンは世界の「モデル」としての地位を確保してきた。希望をなかなか実感できない日本社会から脱却するためにも、スウェーデンという「日本とは異質な社会」を角度を変えて描写してみたい。とりわけ、生活者の視点から眺めてみたいと思う。そのなかから学ぶべき点はなにか、おのずと明らかになっていくのではあるまいか。(後略)

(二文字理明)

 

 本書の執筆者が全員、スウェーデンに魅力を感じ、その魅力を各自のテーマに即して情熱をもって語っていることは、読者がどの章を読んでも感じとることができると思う。私がスウェーデンに興味をもちはじめた十数年前、スウェーデンといえば老人介護や障害者ケアが優れた福祉国家というイメージだけがまだ強かった。ところが、最近ではスウェーデンは、小学校では成績を付けない国、ゴミ焼却でダイオキシンをほとんど出さない国、コンピュータの先進国というように、福祉以外の面も広く知られるようになってきた。このことは日本のスウェーデン研究が一定の広がりをもってきていることの反映だろう。スウェーデンに福祉ではなく、経済(特に労使関係)と教育から接近した私がこの10年間に買ったり、もらったりしたスウェーデン関係の日本語で書かれた本(雑誌は除き、小冊子と論文所収本を含む)は数えてみたらほぼ200冊あった。特に、ここ5年で急増している。それは、日本の支配的な勢力(政府・官僚・マスコミなど)が国のあり方のモデルとして追求してきた、そしていまも追求しているアメリカが実はモデルたり得ないのではないかという疑念が、識者に、そして国民に広がりつつあることの表れなのかもしれない。
 では、スウェーデンの魅力とは何か。なぜ幅広い分野の専門家が各々のテーマでスウェーデンに魅力を感じることができるのであろうか。
  (中略)
 スウェーデンは「社会科学の実験国家」だと言われている。時代状況の変化に対応して実に簡単に制度(法律)が変更される。そのため、スウェーデン研究者は絶えずこの変化を追いかけ、変更された意図を正確に捉え、その目的と意義を探る必要に迫られる。それはスウェーデン研究の苦痛であると同時に冥利でもある。「実験国家」スウェーデンは、現実の変化に対して、ポリシー・ミックス(政策の組合せ)とプラグマティズム(実用主義)で対応している。病気で病院に行くと、医者は患者を診察し、必要に応じて複数の薬を処方する。それと同じように、社会の病気も一つの政策では対処できないのである。たとえば、雇用政策は経済政策だけでなく、教育政策や福祉政策や家族政策とも繋がっている。したがって、各政策の成否は他の政策との組合せの妙で決まる。そのとき、個性を重視した個人主義にもとづいて、良いものは良い、悪いものは悪いというプラグマティックな判断が働くのである。スウェーデンの魅力は、このような柔軟な「実験国家」の魅力ではないだろうか。スウェーデンは「社会主義」の国ではない。「資本主義」的な市場経済を基盤にもちながらも、否、もっているからこそ、自由、平等、連帯、平和などの諸価値を実現する「社会民主主義」の国なのである。

(伊藤 正純)

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目 次

 まえがき

第1章 教 育──「個性重視型」共生社会の基礎   二文字理明
 はじめに
 1 福祉社会としてのスウェーデン
 2 不断の教育改革
 3 不変の「教育理念」
 おわりに

第2章 子ども──その生活世界   泉 千勢
 はじめに
 1 子どもの誕生と家族の生活(誕生から1歳まで)
 2 在宅家庭の地域での子育て(1歳から3歳まで)
 3 保育所(daghem)での乳幼児の生活(1歳から5歳まで)
 4 幼児と学童の学校生活(5歳から12歳まで)
 5 児童文学と子どもの環境

第3章 家 族──多様な生活の実態   善積 京子
 1 スウェーデンの家族政策の特徴
 2 男女の共同生活の実態
 3 多様な生き方と家族
 むすび

第4章 障害者──ノーマライゼーション思想の成熟   二文字理明
 はじめに
 1 1990年代の福祉改革の動向
 2 知的障害者入所施設解体
 3 ノーマライゼーション思想の成熟の内容
 おわりに
 資料『特殊隔離病院および入所施設の解体に関する法律』

第5章 高齢者──エーデル改革の評価を中心に   西下 彰俊
 はじめに
 1 エーデル改革後の高齢者ケア
 2 高齢者のケア・ニーズとケア・アセスメント
 3 ケアの現場に見られる個性重視
 おわりに

第6章 女 性──労働を中心に   レグランド塚口淑子
 はじめに
 1 女性就労の歴史
 2 スウェーデンにおける今日の女性労働
 おわりに

第7章 雇 用──流動化のなかで   伊藤 正純
 1 「左翼パラドックス」のない国
 2 労働組合と経営者団体
 3 労働力関連指標の推移
 4 情報化、サービス化のなかでの産業別就業者数の推移
 5 臨時雇用の増大とパート失業手当
 6 労働市場プログラムと成人教育事業
 7 IT国家・スウェーデン

第8章 文 化──創造的多様性と持続可能な発展   後藤 和子
 はじめに
 1 スウェーデンの文化政策の沿革
 2 自治体レベルの文化政策──ストックホルム市を事例として
 3 生活の質と文化
 おわりに──持続可能な発展と文化

第9章 環 境──持続可能な社会をめざして   伊藤 正純
 1 持続可能な社会への転換
 2 大気汚染、気候変動問題──国際協力
 3 環境保護──禁止、市場誘導
 4 石油から電気へ、原子力からバイオ燃料へ
 5 廃棄物(ゴミ)処理
 6 電力市場の自由化

 あとがき

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