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制度と組織──理論・歴史・現状

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現代社会政策

A5判/上製/280頁

ISBN978-4-921190-42-2

柴田徳太郎編

 執筆者(執筆順,(1)生年 (2)現職 (3)専攻)
柴田徳太郎(しばた・とくたろう)
(1)1951年 (2)東京大学大学院経済学研究科教授 (3)現代資本主義論
中川淳平(なかがわ・じゅんぺい)
(1)1972年 (2)駒澤大学経営学部准教授 (3)組織理論
大森拓磨(おおもり・たくま)
(1)1972年 (2)和歌山大学経済学部准教授 (3)政治経済学・アメリカ金融制度論
阪上亮太(さかがみ・りょうた)
(1)1977年 (2)Nomura International plc.(英国野村證券)エコノミスト (3)景気循環論
平野裕三(ひらの・ゆうぞう)
(1)1973年 (2)東京大学大学院経済学研究科単位取得 (3)経済理論
石塚史樹(いしづか・ふみき)
(1)1975年 (2)西南学院大学経済学部准教授 (3)現代欧州経済論
古谷眞介(ふるや・しんすけ)
(1)1967年 (2)東京大学社会科学研究所研究機関研究員 (3)労使関係論(作業組織研究)

本体4700円+税

発行:2007年6月25日

制度経済学の具体像
「市場か国家」という二項対立図式を乗り越える
「制度と組織」という視点を具体的に提示する

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編者の言葉

 

 我々を取り巻く経済社会が激動期に突入しているのに伴い、経済学も大きな転換の時期に入っている。その中で「制度と組織」という視点が注目を集めつつある。「市場と国家」という古い図式を突破する可能性を秘めているからである。

「市場か国家か」という二項対立の図式は限界に直面している。「国家の介入による市場経済の安定化」という考え方は、「ケインズ政策」の有効性低下と共に影響力を失いつつある。では、「国家の介入」を廃して「規制緩和」を実施すれば、「市場経済」はうまく機能するのか?この問に肯定的に答えるのが新古典派経済学の基本的な考え方で、この考え方に基づく「市場原理主義」は近年影響力を高めつつある。だが、「自由放任によって調和的な経済発展を実現する」という仮説に矛盾する事態も発生しつつある。アジア通貨危機がその一例であり、「格差の拡大」という社会問題の世界的な広がりも「市場原理主義」批判の根拠となりつつある。さらに、戦後の「資本主義の黄金時代」を「自由放任主義」の勝利として描くことは困難であろう。

このように「市場と国家」という図式には限界がある。そこで、注目を集めるようになったのが「制度」と「組織」という概念である。「市場と国家」という図式の代わりに「市場と制度」という図式を導入することによって、「市場経済」が「制度」によって支えられているという観点で市場社会を捉えることができるようになる。この観点から見れば、「資本主義の黄金時代」は「国家の裁量的な政策」によって適正にコントロールされていたのではなく、「諸制度」によって支えられていたのだと捉えることが可能となる。また、「市場と組織」という観点を導入することによって、企業組織という市場経済の主要なアクターの内部では、市場原理とは異なる組織の原理が働いていることが明らかとなる。

「制度と組織」という視点の導入は、合理的な個人が自己利益最大化を求めて行動するという「経済人仮説」への批判という観点とも関連する。ケインズが指摘する「将来の予測不可能性」に基づく「不確実性」に直面する人間は、コンヴェンション(思考習慣)に依存して行動する。コンヴェンションは制度の原型であると考えられるので、人間は制度に依存して行動することによって「不確実性」の問題に対処しているとみなすことができる。「組織」もまた「不確実性」問題への対処と考えることができる。このコンヴェンション=制度に依存する人間像という社会的な人間観は、新古典派の方法的個人主義とは異なるアプローチである。

「制度と組織」という視点の導入のもうひとつのインプリケーションは、「制度」や「組織」の歴史性と多様性を重視するということである。「制度」や「組織」は様々な社会的、文化的、政治的な非経済的要因によって影響を受ける。こうした諸要因は歴史的な独自性を有しているので、「制度」と「組織」は時間的、空間的多様性を持つことになる。したがって、「制度と組織」を「経済人仮説」に基づいて抽象的、演繹的に論じてもあまり有効な成果は上がらないだろう。「市場と制度」「市場と組織」あるいは「資本主義と制度」「資本主義と組織」という視点から現実の歴史的な経済社会の分析を行うことによって、この視点の有効性を示すと共に、この視点に基づく仮説の豊富化を行うことが有効な研究方法であろう。

編者

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目 次

 

 はしがき 柴田徳太郎

第1部 制度と組織の理論と方法

第1章 資本主義と制度の共進化     柴田徳太郎

 第1節 「ルール」によって支えられる「市場」
 第2節 「制度」によって支えられる「資本主義経済」
 第3節 「資本主義経済の進化」と「制度進化」の跛行性
 第4節 結 語

第2章 制度経済学の新展開     中川淳平
    ──企業組織の分析に向けて──

 はじめに
 第1節 新制度学派の企業組織観
 第2節 コーポレート・ガバナンスの視座と制度経済学
 むすび

第2部 金融制度の歴史分析

第3章 サフォーク・システムと1837・39年恐慌     大森拓磨
    ──一商業銀行による「最後の貸し手」機能の内生的展開──

 はじめに
 第1節 「ジャクソニアン・デモクラシー」下の秩序管理
 第2節 1837・39年恐慌と「最後の貸し手」機能
 第3節 恐慌後の進展
 むすび

第4章 アメリカにおける1907年恐慌     阪上亮太
    ──制度論的景気循環分析の試み──

 第1節 問題意識と分析視角
 第2節 1907年恐慌の形態的特色
 第3節 株式ブームの発生──1904〜06年
 第4節 株式ブームの終焉要因──金融逼迫と反独占立法
 第5節 実体経済の下降要因──投資の減退と金融不安定性
 第6節 小 活

第5章 FDICのオープン・バンク・アシスタンス(OBA)
    と最後の貸し手    平野裕三
    ──FRSとFDICの大銀行破綻への対応──

 はじめに
 第1節 FDICの破綻処理手法
 第2節 連邦準備銀行の割引窓口
 第3節 1970・80年代の対応と破綻処理手法の変遷──OBAを中心に
 第4節 最後の貸し手と預金保険機構

第3部 労使関係と労務管理の歴史と現状

第6章 ドイツ管理層職員による利益代表の展開     石塚史樹

 はじめに
 第1節 管理層職員の利益代表の構成と機能
 第2節 歴史的な発展から考える意味
 第3節 職場レベルでの雇用条件形成の可能性
 第4節 結 語

第7章 パッケージ・ソフトウェア開発企業の開発管理     古谷眞介
    ──K3社における計画の立案とその遂行──

 はじめに
 第1節 計画の立案
 第2節 計画の遂行──進捗把握と遅れへの対処
 第3節 見いだされたこと──技術者の自律性に依存した管理

事項索引

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