冒頭の「特集にあたって」で述べられているように、全体として「日本資本主義は変わったか」が問われた。寄せられた4編の論文は、企業/雇用システムの変容、金融システムの変化、経済政策の変容、国際経済関係に焦点を絞り、諸事実にそくして丁寧な分析をおこなっている。個々の領域では大きく変わったと言えても、トータルシステムとしての変化如何に対して明示的解答を与えてはいない。日本資本主義が新たな段階に入りつつあるのか否かは、読者一人一人の今後の課題として残された。そもそもここで提起された問いは、一度の特集で完了する性格のものではない。引き続き会員相互の研究・その協働により追究されねばならない。
資本主義の「段階」という表現は、例えば「蓄積の社会的構造(SSA)理論」を想起させる。SSAアプローチにもとづいてアメリカ資本主義を時期区分すれば、1980年代ないし1990年代が第4の段階に位置する。果たして新たなネオ・リベラルSSAが〈形成〉されたのか否か? ラディカル派のなかでもいまのところ意見の一致はみていない。資本対資本、資本対労働、労働対労働、政府対経済を四つの支柱とするSSAアプローチにもとづく資本主義分析とも呼応させつつ、研究を進めるのも一つの方向性かもしれない。
「変わったか」の問いには、言うまでもなく「いつ、なにが、なぜ、どのように」等が含まれる。そうした実証で終わるのではなく、同時に「どのように変えるべきか」にも応えていかねばならない。先の特集「〈格差社会〉化とオールタナティブ」(44-4)、「〈格差社会〉をどうみるか」(45-1)などが取り組んだ問題系である。
「日本のあるべき姿として、どのようなイメージをもっているか」にかんする最近の世論調査(北海道大学・市民社会民主主義/福祉レジーム研究プロジェクト、2008年)に依れば、「北欧のような福祉を重視した社会」(58.4%)、「かつての日本のような終身雇用を重視した社会」(31.5%)、「アメリカのような競争と効率を重視した社会」(6.4%)という結果になっている。
日本資本主義が「変わっていく先」と人々の望む社会イメージは一致しているのだろうか、あるいはそもそも一致しうるのであろうか。ますますテーマが大きく、広がってしまうが、今回の特集は、こうしたテーマを討究するさいの一つの基礎になったのではないか。読者諸氏の判断に任せたい。
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季刊化された査読誌として『季刊経済理論』は2004年4月に第1号(通巻第41号)が刊行され、今年で5年目を迎えた。論文投稿数が多すぎて処理に困ると言うことはないにしても、つねに一定数の投稿があり、査読誌として定着した感がある。学会誌として質を高めていくために解決しなければならない課題もあろう。第42/43巻の編集委員を務めたが、再びピンチヒッターとして第45巻から編集委員会に加わることになった。前回の経験を生かしながら、努めたいと思っている。会員諸氏には原稿/レフリーなどを依頼することがありますが、あらためてご協力をお願いします。
(佐藤良一)