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季刊 経済理論(42巻第3号)特集◎移行経済の軌跡とその意味

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経済理論(第42巻第3号)

B5判/128頁

ISBN4-921190-86-0

経済理論学会編

編集委員
編集委員長
 大西 広(京都大学)

副編集委員長
 菅原陽心(新潟大学)

委員
 青才高志(信州大学)
 北川和彦(立教大学)
 佐藤良一(法政大学)
 竹永 進(大東文化大学)
 芳賀健一(新潟大学)
 萩原伸次郎(横浜国立大学)
 松本 朗(立命館大学)
 吉原直毅(一橋大学)

経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jspe/index.html
をご覧ください。


 定価2100円
(本体2000円
 +税)


発行

2005.10.20

 

季刊 経済理論
Political Economy Quarterly
第42巻第3号(2005年10月)

特集◎移行経済の軌跡とその意味

 

目 次

  

[特集:移行経済の軌跡とその意味

 

特集にあたって 芳賀健一

ロシア・東欧における市場経済移行の教訓 溝端佐登史

移行経済と経済統合――進化的視点の再定位 八木紀一郎

資本主義の多様性と経済理論 森岡真史

 

[論文]

商品の交換比率と価値――実体論的交換比率論から形態論的交換比率論へ 泉 正樹

権力の源泉と関心の対立――経済的権力再考 金子裕一郎

再論:70年代マルクス派搾取理論再検証 吉原直毅

新古典派的「マルクス・モデル」におけるRoemer的「搾取」の検討 山下裕歩

ミクロ・マクロ・ループ論における制度と主体――現代制度学派とレギュラシオン学派の検討から 江口友朗

ミンスキー的循環, 不安定性と逆循環的財政政策 二宮健史郎

 

[書評]

G・A・コーエン著/松井 暁・中村宗之訳『自己所有権・自由・平等』 青木孝平

西部 忠編著『進化経済学のフロンティア』 磯谷明徳

ロベール・ボワイエ著/山田鋭夫訳『資本主義vs資本主義』 安孫子誠男

野口 真・平川 均・佐野 誠編著『反グローバリズムの開発経済学』 岩ア徹也

萩原伸次郎著『世界経済と企業行動――現代アメリカ経済分析序説』 板木雅彦

 

[書評へのリプライ]  

『資本主義はどこに行くのか』に対する書評(評者:加藤國彦氏)へのリプライ 馬場宏二

――

論文の要約(英文)

刊行趣意・投稿規程

編集後記

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特集にあたって
 この特集は2つの目的をもって編集された。1つは、「移行経済」の進化過程と現状を明らかにすることである。ソ連・東欧の社会主義システム(計画経済)は1989〜91年に崩壊し、資本主義システム(市場経済)への移行を開始した。ロシアの移行期政権が当初採用した「ショック療法」は、価格統制を撤廃し国有企業を民営化すれば、「市場経済」が自生的に形成されるとする素朴な新古典派的信念にもとづいていたが、目論見とはまったく逆に、経済を混乱させ縮小させるに終わった。その過程で、市場を支える社会制度の重要性が再認識され、また経済もようやく2000年頃に回復に転じたかに見える。さらにEUの東方拡大に象徴されるように、移行経済を取り囲む国際環境も近年大きく変化してきている。ロシア・東欧の移行経済が描いた多様な軌跡の解明は、世界経済にとって、またロシアを隣国とする日本にとって意義ある作業であろう。

 もう1つの目的は、ロシア・東欧の移行経済の進化過程が、われわれの資本主義システム認識にもつ意味を明らかにすることである。1970年代末からイギリス・アメリカに主導されて、ネオリベラリズム(新自由主義)が先進国・途上国を問わず世界的な広がりを見せてきた。とりわけ先進国では、戦後の高度成長を支えてきた様々な社会制度が、市場による効率的な資源配分を阻み、低成長や高失業を結果していると非難されてきた。具体的には、銀行中心型から資本市場中心型への金融システムの移行、あるいは硬直的な労使関係から柔軟な労働市場への移行、福祉国家の縮小と自己責任の拡大が声高に叫ばれている。先進国もまた「移行」期にある。単純なアナロジーは避けねばならないが、ロシア・東欧の経験は、適切な社会制度なしに市場そして資本主義システムが順調に作動しないことを教えてくれる。しかも、社会制度は多様な進化を遂げるから、そのもとで発展する資本主義システムもまた多様である。資本主義の多様性を認識すれば、移行経済も日本もそれぞれの優位性を備えた社会制度を構築しなければならないであろう。ネオリベラリズムが想定するアングロ・アメリカン型の資本主義に収斂させるような政策選択はいたずらに混乱を生みだすだけである。移行経済の分析は、単にロシア・東欧に特有の事例分析ではなく、われわれの資本主義認識に転換を迫る内容をもっているのである。

 今回の特集に寄稿された3論文は、上記の2つの目的を真正面から受け止めて執筆された。溝端論文は、「経済主体・制度・行動」に注目してロシア・東欧(ヨーロッパ地域で27カ国)の多様な移行過程を実証的・理論的に鳥瞰した上で、錯綜する移行理論を明快に腑分けし、転換のパフォーマンスを「人口、労働市場、社会格差」から評価する。また移行理論は所有権の転換に限らず、経済主体の複雑な反応・行動に注目して分析すべきだとする教訓を引き出し、移行経済の直面する課題が先進資本主義国にも共通することを指摘して、移行経済研究の含意を明示している。八木論文は、移行過程が欧州経済・世界経済への統合過程でもあった事実に注目して、進化的な移行観の再定位を試みている。進化的移行の問題群を、「市場社会主義」への漸進的移行の可能性および移行過程で発生した予想外の事態が及ぼす経路依存的影響の2つに分けて考察して、第1に、従来の社会主義思想の枠内で構想された進化過程(労働者自主管理等)は移行初期に実現不可能性が明瞭になった、第2に、移行初期の「インサイダー民営化」等の現象が資本主義的発展を主導する要素でなかったことは内生的な進化観の再考を促している、第3に、移行過程の政治経済学的なガバナンスは国内・国際・地域に重層化した構造をもつ、これら3つの結論を引き出している。

 移行経済が形成しつつある資本主義の多様性は溝端論文・八木論文でも論じられているが、森岡論文は先進国を含む資本主義の多様性論に力点を置いて構想されている。とくにマルクス的資本主義認識を批判的に継承する「制度派的多様性論」に注目して、その特徴を4点(資本主義の理論は「開かれた体系」である、資本主義は多層的・多重的構造であり、また家族・国家を含む複合的システムである、資本主義の動態は全体構造の変化として分析される)にわたって考察し、さらに今後の研究課題を展望している。資本主義の多様性論はソ連・東欧の崩壊を承けて活発化しているが、移行経済の多様な軌跡の解明に示唆するものが多く、同時に従来の経済理論に多くの課題を提起している。

 如上の3論文はいずれも、最新の研究動向と文献を渉猟しつつ、相互に共鳴しあう論点を採り上げて、斬新な問題を提起している。今回の特集がきっかけとなって、欧米だけでなく日本の政治経済学においても「移行経済」の軌跡とその意味に関する論争が本格的に開始されることを期待している。  芳賀健一(編集担当)

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編集後記
 今号の編集後記はこれまでのものと次の二点で異なっている。第一に、これまでは編集後記で特集についての主旨を論じていたが、それを本号では、冒頭で、「特集にあたって」として、まとめたことである。そして、これは、今号の編集を実質的に担当してきた芳賀編集委員の筆による。第二に、そのことによって、編集後記は、編集を芳賀委員に任せっぱなしにしていた菅原が記すことになった点である。本来ならば芳賀委員こそ編集後記を記すにふさわしいのであるが、仕事量の偏りを多少でも軽減するということから、菅原が厚顔にもこの後記を記すことになったわけである。

 今号からの本誌構成の変化について触れておこう。これからは特集論文を3篇程度にし、投稿論文に割く頁数を増やすという構成になる。査読論文を掲載する学会誌を季刊化することは、より多くの投稿論文を掲載し、「経済学における批判的な研究の公器」たる本誌を舞台にした熱い論争を繰り広げることをその第一の目的としている。他方、特集が広く注目を集めていることも事実であり、タイムリーな、あるいは、本学会ならではという企画をたてた特集を組むことが大きな意義を有していることも否定できない。季刊化されて、まだ、1年半という短い時間しか経っておらず、いまだ、手探り状態で発行しているという状況の中で、特集の位置づけについても、内容、分量も含め、試行錯誤を繰り返しているというところが正直なところである。幸いなことに、論文の投稿数が増加傾向にあるというなかで、特集論文の頁数を若干抑制するということが、当面の編集委員会の方針であるとご理解いただきたい。こうした編集方針を議論する中で、たとえば、特集と共通する内容の投稿論文を掲載するということも話題となった。前号では、たまたま、そのような結果になり、特集の厚みがさらに増したようにも思える。しかし、毎号そうした工夫ができるほど投稿論文のストックがあるわけではなく、そうしたことも含めて、今後の課題であるという他はない。

 投稿論文数についていえば年報から季刊化に移行する際に、悲観論の立場から見積もられていた数と比較すると、かなり多い数に上っている。6月の編集委員会時点で、42巻になってからの投稿論文は通算32本に上る。しかし、また、レフェリーの厳格な審査が待ちかまえているわけである。その結果、掲載論文の水準はかなり高いものになっていると自負しているが、同時に、編集担当者の立場としては、掲載論文の数がそろうかどうか冷や汗が、という瞬間もある。さらに多くの方々からの投稿を切に願う次第である。

 最後に、編集の仕事に携わって痛感したことを記して筆を置きたい。それは、本誌が非常に多数の会員の方々の協力に支えられているということである。一例だけをあげておこう。投稿論文の数が増えれば、大勢の方にレフェリーをお願いすることになる。専門分野などで切り分けていくと、レフェリー依頼も頭の痛い問題となる。これまでまったく面識のない方にメールで依頼をし、引き受けていただけなければと冷や冷やしている時に、快諾の返信をいただくときのうれしさは格別である。会員の方々の無私の協力で本誌が支えられていることを痛感する時でもある。(菅原陽心)

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刊行趣意

 

 本誌は社会的・歴史的視野をもった経済学の理論の発展に貢献することを目的とした季刊ジャーナルとして、経済理論学会によって刊行されます。

 取り扱う領域は、狭義の経済理論だけでなく、近・現代の経済および経済政策の分析、現代資本主義の理論、社会主義その他のオルターナティヴの検討、政治経済学・社会経済学の新領域、古典的理論の再検討などを含みます。

 本誌は経済理論学会が1961年以来刊行してきた『経済理論学会年報』を引き継ぐものですが、投稿資格は学会会員に限定されません。経済学における批判的な研究の公器として編集され、投稿された論文は厳正な学術的な審査のもとに採否が決定されます。本誌刊行の趣旨をご理解いただき、積極的な投稿、批評、また購読によってご支援くださるようお願いします。

経済理論学会

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投稿規定
 

1.

本誌は厳格なレフェリー制度に基づき投稿を受け入れています。刊行の趣意に合致した投稿を歓迎します。

(a)

投稿は「論文」「研究ノート」の2つのカテゴリーで受け付けています。

(b)

投稿者は経済理論学会会員に限りません。非会員の投稿も会員のものとまったく同じ手続きで審査され,掲載されます。

(c)

匿名,あるいは組織名での投稿は受理しません。

(d)

受け付ける原稿は,未公刊のものに限りますが,口頭発表,コンファレンス・ペーパー,ディスカッション・ペーパーの類は,未公刊とみなします。

(e)

他雑誌との重複投稿等は絶対におやめください。

 なお,今回投稿規定を改め,1,000字を上限とした論文要旨も提出してもらうことにしました。これから提出される方は論文要旨も必ず提出してください。

2.

投稿は日本語によるものを原則とします。それ以外の言語の場合には,その都度,編集委員会でその取り扱いを判断します。

3.

「研究ノート」は,興味深い論点の簡潔な解明やサーベイ,有益な資料紹介や研究ガイドなどを内容とするものです。

4.

投稿はカテゴリーごとに以下の字数の上限を設けており,上限を超えた投稿は受理しません。なお上限には,図表・参照文献などを含みます。

(a)

「論文」:日本語24,000字,英語12,000words

(b)

「研究ノート」:日本語12,000字,英語6,000words

5.

投稿に際しては,次の提出物を投稿受付窓口(後掲:桜井書店)にお送りください。
(1) A4判横書きで明瞭に作成した投稿論文正本1部(日本語の場合は1ページ35字×30行,英語の場合は1ページ約500words程度),(2)審査用副本3部,(3)正本・副本の電子ファイル(1枚のフロッピー・ディスクまたはCD-Rに収めてください),(4)論文要旨4部。なお,正本には,氏名,所属,郵送先,電話番号,e-mailアドレスを付記してください。

6.

審査用副本はレフェリー審査のため執筆者が特定されるような記載を削除した原稿です。本文や注での執筆者の別の論文への言及や文献リストも含めて,執筆者の特定につながるものはすべて削除してください。上記に該当する恐れのある箇所は,編集委員会で点検し,削除させていただくことがあります。

7. 論文要旨は,冒頭に投稿論文のキーワードを3つ記載し,本文800字〜1,000字(英語の場合は400words〜500words)の範囲で,無記名で作成してください。また,審査用副本と同様,執筆者が特定されるような記述を含まないようにしてください。

8.

投稿は随時受け付けますが,編集委員会では,事務の都合上,3月,6月,9月,12月の各10日前後を実質的締め切りとし,それまでの到着分を一括してレフェリー審査を行っています。投稿者には,原稿が到着した時点で受け取った旨通知します。

9.

受取通知から概ね3か月で審査結果をお知らせします。審査がながびく場合にも,その頃に通知します。

(a)

「そのまま掲載可」の場合または「わずかな手直しで掲載可」となった場合は,「改善要望」と「提出原稿作成の手引き」を送付しますので,これにしたがって,電子ファイルとハードコピーで原稿を再提出してください。 
また,その際に,英語によるタイトル,著者名のローマ字表記,英文キーワード3点,英文サマリー(論文は300words〜600words,研究ノートは200words〜400words)を付してください。掲載号は,編集委員会が決定します。掲載には受取通知から最短で7か月を要します。

(b)

「継続審査」扱いとして,「改善要望」と期限を伝える場合もありますが,これは期限内に改善された原稿が再提出された場合,前回と同じ基準で再審査を行い採否を決定するもので,掲載を確約するわけではありません。

10.

掲載が決定された場合,その原稿の著作権を経済理論学会に委譲してください。ただし,原著者の著作権使用の申し出については,所定の基準・手続きによって無償で許可します。詳しくは経済理論学会ホームページの「機関誌」「投稿案内」を参照してください。

11.

希望により所定額(5,000円)で抜刷り30部を作成します。

12.

経済理論学会の会員でない著者からは,掲載号刊行時に掲載料5,000円を徴収します。

(2007年6月17日改定)

投稿宛先

『季刊 経済理論』事務局
  〒113-0033
  東京都文京区本郷1-5-17 三洋ビル16
  桜井書店気付
  電話 (03) 5803-7353/fax (03) 5803-7356
  e-mail:sakurai@sakurai-shoten.com

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