|
本書の書名を『現代の景気循環論』としたように、景気循環の理論的解明と数値解析を踏まえながら現代資本主義の景気循環の法則的変容を解明しようとした。循環メカニズムは資本主義である以上貫徹しているが、現代資本主義は段階的に発展し景気循環も形態を変化させてきた。本書の第1部では景気循環の変容論を展開し、第2部では景気循環モデルと数値解析がなされ、その経済学的意味を考察し、第3部では景気循環論の論争点を中心として景気・恐慌学説を短期・中期循環から長波にまで広げて検討した。
〈本書の理論と方法〉
(1)『資本論』の世界は価値・生産価格体系下の構造分析であり、景気循環論はそこから上向した市場価格次元で展開した。
(2)景気・恐慌学説は供給サイド理論(マルクスの言葉で言えば「搾取の諸条件」)と需要サイド理論(「実現の諸条件」)の二大潮流に分かれるが、両サイドを統合して解明しなければならない(「統合派」)。
(3)諸学説において経済諸量の循環的変動について対極的な想定がなされていることがしばしばあるが(実質賃金率の循環的運動はその典型である)、初期条件や反応係数や先行する循環局面のあり方によってさまざまな循環的変動をする。一義的な因果関係によっては説明不十分であるので、数理モデル化して恐慌なり景気転換が起こる諸条件を特定化した。
(4)マルクスの再生産表式は再生産・蓄積そして景気循環分析の基軸におかなければならないが、『資本論』第2巻第3篇では「価値通りの販売」が前提されている。市場価格の世界である景気循環論にそのまま応用することはできない。景気循環の世界では商品が実現されるか否かが「命がけの飛躍」であり、実現を前提にすることはできない。
(5)したがって、利潤(剰余価値)が投資を決定するのではなく、投資(需要)が利潤を決定する。
(6)マルクス再生産表式は価値と物量が分離されていないが、分離した表式を使用すれば、均衡関係は物量関係となり、変動(不均衡)は価格変動となる(価格調整の場合)。
(7)資本蓄積が決定的に重要であり、それによって実質賃金率が決定される。
(8)一義的な因果関係によって恐慌を説明することは不可能であるから、「恐慌の必然性」論を放棄し、「恐慌の可能性を現実性に転化させる諸条件」論に変化させた。
(9)景気循環によって資本主義は均衡を達成する(平均化機構としての景気循環)。こうした立場は本書でも同じであるが、新たに固定資本を導入し、価格調整だけでなく数量調整と両方のミックス調整モデルを作成した。また景気循環が繰り返される長期にまで数値解析を拡大した。
マルクス派の恐慌学説の優れた点は、資本主義に固有な景気循環運動を資本主義に内在する諸矛盾(「基本的矛盾」とか「根本的矛盾」とも呼ばれる)の展開(活動化)として解明しようとするところにある。また、歴史的発展過程を重視して、長期波動分析にまで視野を広げてきた。しかしわが国の恐慌論研究はあまりにも10年周期の景気循環(ジュグラー波)に限定されてきた傾向があった。循環と発展を切り離すべきでないというのが本書の主張の一つである。
著者の言葉に戻る
目次を見る
ページの初めに戻る
|