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ファシズムの解剖学

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ファシズムの解剖学

四六判/上製/456頁

ISBN978-4-921190-54-5

ロバート・パクストン著/瀬戸岡 紘訳

著者
ロバート・パクストン(Robert O. Paxton)
コロンビア大学名誉教授、ニューヨーク在住
1932年、ヴァージニアに生まれる。
ハーヴァード大学で博士号を取得後、カリフォルニア大学、ニューヨーク州立大学を経て、コロンビア大学の歴史学教授として長く教鞭をとってきたファシズム研究の第一人者。
邦訳書に『ヴィシー時代のフランス』(渡辺ほか訳、柏書房、2004年)がある。

訳者
瀬戸岡 紘(せとおか・ひろし)
駒澤大学経済学部教授
1945年 東京に生まれる。
1968年 早稲田大学商学部卒業。
1975年 同大学院商学研究科経済学専修博士課程単位取得退学。
1977年  駒澤大学経済学部専任講師、同助教授を経て現在にいたる。
1987〜88年、1997年、2007年 コロラド大学客員研究員
著 書 『グローバル時代の貿易と投資』(共編著、桜井書店、2003年)
    『アメリカ:理念と現実』(時潮社、2005年) ほか
訳 書 メイヤー著『アナリティカル・マルクシズム』(監訳、桜井書店、
    2005年) ほか

定価:
本体4500円+税

発行
初 刷:2009年1月15日
第2刷:2009年4月25日

 

ファシズムとは何か?
ファシストとは誰か?
ファシズムは過去形で語ることができるか?

第一人者が答えます

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著者の言葉

 本書のアメリカ版原書の原稿ができあがってから3年が経過した。この3年間、ファシズムの研究がいっそうタイムリーになるような多くのことが起こった。民衆の統合とか、民衆の純化とか、民主主義のかわりに大衆に基盤をおいた独裁をもってこようとする運動が段階を追ってしだいに強大化し覇権を打ちたてようとする傾向などがそれだ。

 アメリカ政府は、テロリズムが国の安全にとって非常に大きな脅威となっているなどという議論をするなかで、テロリズムの疑いを口実に法の支配を停止してしまった。ヨーロッパ諸国は、怒りをいだく若者や、移民の家族から切り離された若者たちを、自国の民族共同体のなかに同化する適切な道をさぐろうと奮闘している。

 第二次世界大戦の感情の遺物が、この大戦に参加した国々すべてに影響をあたえつづけている。1930年代から1940年代にかけてファシズムが引き起こした諸問題は、依然としてわれわれの問題でもあるといわなくてはならない。

ニューヨーク、2006年4月

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訳者の言葉

 本書は、Robert O. Paxton, The Anatomy of Fascism, Alfred A. Knoff, Publisher, New York, 2004 の全訳日本語版です。ただし、30ページにおよぶ付録、"Bibliographical Essay"は、著者の了解のもとに割愛しました。ファシズムに関する研究をさらに深めるために検討の必要な文献を著者が案内している文章であり、著者としても、できればこの部分を含めて訳出してほしいと希望していたのですが、諸般の事情から、さしあたり刊行される日本語版では涙をのんでいただくことにしました。ファシズム研究のさらなる展開に意欲をおもちの読者諸賢は、割愛した付録の部分をも是非原書でお読みいただきたいと願っています。

 著者ロバート・O・パクストンは、1932年、アメリカのヴァージニア生まれ、地元のワシントン・リー大学卒業後、オクスフォード大学で修士、ハーヴァード大学で博士の学位を取得、その後、カリフォルニア大学バークレイ校、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校をへて、ニューヨークのコロンビア大学の歴史学教授として長く教鞭をとってきたファシズム研究の第一人者です。

 パクストンは、研究成果を Parades and Politics at Vichy, Princeton University Press, 1966; Vichy France, Barrie and Jenkins, 1973; Vichy France: Old Guard and New Order, 1940〜1944, Columbia University Press, 1982(ロバート・O・パクストン『ヴィシー時代のフランス 対独協力と国民革命1940〜1944』渡辺和行・剣持久木訳、柏書房、2004年)、Europe in the Twentieth Century, Harcourt College Pub., 1985; French Peasant Fascism, Oxford University Press, 1997 などとして著してきました。このほかにも、大いに話題になったマイケル・マーラスとの共著 Vichy France and the Jews, Basic Books, 1981, ニコラス・ウォールとの共著 De Gaulle and the United States: A Centennial Reappraisal, Berg Pub. Ltd., 1994 などがあります。本書は、これらの著作全体の集大成として書き上げられたもので、パクストンの研究業績の頂点をなしています。そればかりか、本書は、その分析の冷静さ、緻密さからも推測できるように、ファシズムを研究しようとする者が今後避けてとおれない、この分野における現時点での世界最高峰にもなった一書だといっても過言ではないでしょう。

 パクストンは、その多彩なファシズム研究の手がかりをヴィシー・フランスの考察からつかんだようで、この分野だけでも上記に見るように何冊かの著作を書いています。代表作は Vichy France: Old Guard and New Order, 1940〜1944 で、ここでかれは、ヴィシー政権がナチス・ドイツと協調してきたのは、ドイツ側から強制されたからというより、むしろヴィシー政権自体の自発的な判断によるものだったことを明らかにして、一躍有名になったのでした。

 パクストンの研究は、ヴィシー・フランスの研究を基礎にしながら現代ヨーロッパ史全体へ、さらに今日にいたる現代世界史全体に見られるファシズムに類似するレジームの比較検討へと拡大していったようです。多くの研究者から高く評価されてきたパクストンのファシズムの定義は、そのようななかで醸成されてきたといえるでしょう。本書では、「ファシズムとは、民族共同体の没落、屈辱、被害者意識といったものに強迫されたかのように捕われた、あるいはまた、民族の統合、活力、純潔という代替すべきものをもって熱狂することを特徴とする、政治行動の一形態」と規定しています。しかも、パクストンによると、ファシズムとは、大衆的基盤をもつ政党が主導するものなのですが、そこには民族主義的武装集団が関与し、伝統的な保守派エリートとの協調関係が成立し、民主主義的自由は放棄され、倫理感も存在しなければ法的手続きも存在しないまま暴力が横行し、国内では民族浄化が、国外にたいしては拡張主義的戦争が追求される、というものです。かれは、ファシズムの予兆を未然に察知し、その成長を防止するためには、まずファシズムについて正確な知識をもつことが大切であり、そのためにもファシズムに安直な定義を与えるようなことがあってはならない、としています。この翻訳書が、現代史のなかに生きる日本の読者諸賢にとっても有意義なものになることを翻訳者として強く願わないではいられません。

 パクストンは、現在、コロンビア大学の名誉教授として、ニューヨークに在住しています。

2007年2月

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目 次 

序文
ドイツ語版および日本語版への序文

第1章 序論

 第1節 ファシズムの起源
 第2節 ファシズムのイメージ
 第3節 ファシズム研究の戦略
 第4節 どこに向かって検討をすすめるべきか?

第2章 ファシズム運動の始まり

 第1節 ファシズム運動発生前夜の情勢
 第2節 ファシズムの直接的な背景
 第3節 知的起源、文化的起源、情緒的起源
 第4節 長期にわたる前提条件の形成
 第5節 ファシズムの先駆け
 第6節 ファシストの新規獲得
 第7節 起源だけで解釈してはならないファシズム

第3章 根をおろすファシズム

 第1節 非常に多い成功しなかったファシズム
 第2節 成功したファシズム(1)
      イタリア、ポー川流域(1920〜22年)の事例
 第3節 成功したファシズム(2)
      ドイツ、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン(1928〜33年)の事例
 第4節 成功しなかったファシズム
      フランス(1924〜40年)の事例
 第5節 その他の成功しなかったファシズムの事例
 第6節 比較と結論

第4章 権力の掌握

 第1節 ムッソリーニと「ローマ進軍」
 第2節 ヒトラーと「密室での共謀」
 第3節 実際にはなかったこと:選挙、クーデター、単独勝利
 第4節 同盟の形成
 第5節 ファシストが体制派に提供したもの
 第6節 ファシズム前夜の危機
 第7節 権力掌握後の革命:ドイツとイタリアの事例
 第8節 比較と選択肢

第5章 権力の行使

 第1節 ファシズム支配の性質:「二重国家」と形なきダイナミックス
 第2節 ファシストと保守派の主導権争い
 第3節 指導者と党の主導権争い
 第4節 党と国家の主導権争い
 第5節  適応と熱狂と恐怖と
 第6節 ファシズムの「革命」

第6章 ファシズム破局への行程
    過激化か、それとも拡散化か?

 第1節 過激化の可能性と拡散の可能性
 第2節 なにが過激化に駆りたてるのか?
 第3節 ホロコーストにかんする考察
 第4節 イタリアの過激化:国内の秩序、エティオピア戦争、サロー共和国
 第5節 最終局面における判断

第7章  戦後のファシズム、ヨーロッパ以外のファシズム

 第1節 ファシズムは今後もありえるのか?
 第2節 1945年以降の西ヨーロッパ
 第3節 ソヴィエト崩壊後の東ヨーロッパ
 第4節 ヨーロッパ以外のファシズム

第8章 ファシズムとはなにか?

 第1節 ファシズム解明の困難さ
 第2節 あい対立するさまざまな解釈
 第3節 ファシズムとそうでないものとの境界線
 第4節 ファシズムとはなにか?

注記
訳者
あとがき
人名索引
事項索引

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