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季刊・経済理論 第58巻第3号(2021年10月)特集◎現代資本主義の諸論点:貨幣・環境・技術・国家
季刊・経済理論第58巻第3号

経済理論学会編

B5判/並製/120頁
ISBN978-4-905261-55-1
本体2000円+税
発行
2021年10月20日

目次

[特集◎現代資本主義の諸論点:貨幣・環境・技術・国家]

  • 特集にあたって  柴崎慎也
  • 資本による貨幣の変容:現代資本主義像の再構築のために  江原 慶
  • 持続可能性と政治経済学:自然環境をめぐる論点を中心に  山川俊和
  • 資本主義経済における技術へのシステム論的アプローチ  瀬尾 崇
  • 福祉国家論の理論的再検討  佐藤一光

[論文]

  • ブルジョワ社会の表象と資本主義生産様式:ジョン・ロックを読むマルクス  柏崎正憲
  • リカードウ課税論の限界:税の長期的効果の分析をめぐって  若松直幸

[書評]

  • 原田哲史著『19世紀前半のドイツ経済思想:ドイツ古典派、ロマン主義、フリードリヒ・リスト』  恒木健太郎
  • SGCIME編『マルクス経済学 市場理論の構造と転回』  竹永 進
  • G・A・エプシュタイン著/徳永潤二・内藤敦之・小倉将志郎訳『MMTは何が間違いなのか?:進歩主義的なマクロ経済政策の可能性』  伊藤 誠
  • ロベール・ボワイエ著/山田鋭夫・平野泰朗訳『パンデミックは資本主義をどう変えるか:健康・経済・自由』  原田裕治

[書評へのリプライ]

  • 飯島寛之氏による『ウォール・ストリート支配の政治経済学』の書評に対するリプライ  中本 悟・松本 朗
  • 西 洋氏によるMicrofoundations of Evolutionary Economics書評へのリプライ  塩沢由典・森岡真史・谷口和久

論文の要約(英文)

刊行趣意・投稿規程

編集後記  森本壮亮

特集にあたって

本特集では、1970・80年代以降の現代資本主義において大きな変容をみせている、貨幣、環境、技術、国家を焦点に、現在の政治経済学に共通する問題意識ないし課題を引き出すことを目的としている。

貨幣、環境、技術、国家の四項目を現代資本主義の諸論点として取り上げることは、新型コロナウイルス感染症が猖獗を極める2020年代にあっても、とくに異論はなかろう。金廃貨および不換制への移行、地球温暖化に代表される地球環境危機の前景化、IT化および人工知能をはじめとする新技術の登場、新自由主義の下での福祉国家の動揺といった状況は、現代資本主義を特徴づける枢要な論点として現在もなおこれらの四項目の考究が政治経済学において不可欠であることを示している。もちろん、現代資本主義の枢要な論点としてはこれらの四項目のほかにも、ジェンダーや少子化、労働などの項目を挙げる必要は当然あるが、特集の紙幅の都合上、これらについては過去および今後の本誌の特集に委ねることとする。

本特集の特徴は、その狙いからして大きく二つある。ひとつは、これまでの本誌における特集が概ね、テーマを仮に価値と設定すれば執筆者全員が価値を対象に論じるスタイルであったのに対して、本特集では現代資本主義という大枠を設定したうえで、四名の執筆者がそれぞれ異なるテーマについて論じるスタイルをとっている。本特集のこのスタイルは、論点が拡散し特集としてのまとまりを欠く危険と隣り合わせである一方、大枠として設定した現代資本主義にアプローチするうえでの現在の政治経済学における共通認識を、各テーマを通じて立体的に浮かび上がらせることのできるメリットを有している。本特集で扱いきれなかった論点を過去および今後の本誌の特集などで補完することによって、近年の政治経済学に共通の問題意識ないし課題はより鮮明になろう。

またひとつは、テーマがそれぞれ異なっているだけでなく、執筆者四名がそれぞれ学問的立場を異にしていることである。本特集論文の執筆にあたっては、江原慶会員(大分大学)には経済原論の観点から、山川俊和会員(大阪産業大学)には環境の政治経済学の観点から、瀬尾崇会員(金沢大学)にはシュンペーター研究の観点から、佐藤一光会員(東京経済大学)には財政社会学の観点から、それぞれ現代資本主義の諸論点を論じていただいた。この狙いは言うまでもなく、個々の学問的立場ではなく、それらを横断する政治経済学に固有の問題意識を浮かび上がらせるためである。この狙いのもと、本特集にあたって、執筆者四名および本特集担当者(柴崎慎也)はこれまで数回にわたり研究会を行い、互いの現在の問題意識ないし課題の共有を図った。本特集では、こうした研究会をふまえてブラッシュ・アップされた四論文を通じて、現在の政治経済学に共通する問題意識ないし課題の摘出を図る。

(中略)

政治経済学の有効性が問われてからすでに久しいが、そのもっともラディカルな挑戦は開始されたばかりである。外野の先入見に対しては、本特集もまた、マルクスに倣って次の標語を掲げておきたい。

―汝の道をゆけ、そして人にはその言うにまかせよ!

(柴崎慎也)

 
編集後記

雑誌の編集に携わって15年になるが、よく考えてみると、自分が特集を企画した記憶がない。「こんな企画面白いだろうな」と考えることはしばしばあったが、会議で賛同を得られなかったり、原稿を断られてしまったり、他の雑誌に先を越されてしまったり、特集の企画権が編集委員会から無くなってしまったり……。しかし本誌では、編集委員の任期を務めあげたら、最後に御褒美として特集を企画する権利(仕事?)をもらえるようだ。

本号の特集は、そのようにしっかりと任期を務めあげられた柴崎慎也氏が企画した「現代資本主義の諸論点:貨幣・環境・技術・国家」である。論文執筆者は、江原慶、山川俊和、瀬尾崇、佐藤一光の4名。江原論文は、不換制下の信用貨幣概念についての試論である。氏も指摘するように、不換制に名実ともに移行して半世紀経ち、近年はMMTのような貨幣論も影響力を拡大している。このような現代、兌換制下の金貨幣を基礎としたマルクスの貨幣論の意義や、その再構成の必要性について考えることは、各々結論は異なっても避けて通れないだろう。山川論文は、持続可能性と政治経済学との関係という近年注目のテーマについて、海外に加えて、植田和弘、宇沢弘文、宮本憲一ら国内の論についても俯瞰的に紹介・検討している。瀬尾論文は、資本主義経済における技術とその変化の意義についての検討であり、マルクスやシュンペーターの技術論に加えて、システム・ダイナミクスの見地もとりあげている。そして佐藤論文は、マルクス主義財政学および財政社会学における国家の理論的な位置付けの再検討である。ここでもMMTが最後にとりあげられ、従来の福祉国家論とは異なる、国家による貨幣発行と雇用保証を主張する反緊縮の理論について検討されている。

特集は、その性質上必ず編集者の色が出る。「色」と言っても、偏見という意味ではなく、その人のセンス、視点、物事の進め方、人脈などである。このようなものは客観性を旨とする学術誌にそぐわないとして、自身も批判を強く受けてきたが、このような「色」こそがその雑誌に生命を吹き込むものだと自分は考えている。読者の方々が今号の「特集にあたって」を読むと、特集の意図に加えて、企画者の「色」をも十分に感じ取ることができるだろう。自分は昔、編集者として遠い先輩にあたる故森岡孝二氏に、「時代の一歩先を行く視点で、センセーショナルに」が編集のポイントだと教えられたことがある。自分にも番が回ってきた時は、自分の「色」を十分に出せるようにしたい。

最後に編集の現場から。論文を投稿したが、査読前に不受理となった、審査の過程で納得できないコメントをされた、などと不快に思っている方も多いかもしれません。ただ、これらは当該論文が気に入らないという理由からでは決してなく、より良い形で掲載してほしいとの思いに基づくものであることを御理解いただければと思います。序論や結論が無い、文章に論理の飛躍が多かったりまとまりがなかったりして読解が困難、自身の周辺の先行研究しか調べていないなどのケースが多くあります。また、自身では気づいていないだろうなと思うことも多々あります。可能な範囲で結構ですので、業績ではなく読者を意識した執筆をお願いいたします。

(森本壮亮)

編集委員

委員長

  • 宮澤和敏(広島大学)

副委員長

  • 鍋島直樹(名古屋大学)

編集委員

  • 阿部太郎(名古屋学院大学)
  • 泉 正樹(東北学院大学)
  • 柴崎慎也(北星学園大学)
  • 田添篤史(三重短期大学)
  • 羽島有紀(駒澤大学)
  • 星野富一(富山大学)
  • 森本壮亮(立教大学)
  • 村上研一(中央大学)
  • 吉田博之(日本大学)

経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。