- 季刊 経済理論 第52巻第4号(2016年1月)◎戦後70年:日本資本主義の現局面
- 目次
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[戦後70年:日本資本主義の現局面]
- 「戦後50年」から「戦後70年」へ 矢吹満男
- 現代資本主義の再生産構造と段階規定:米日東アジアの経済連携を中心として 二瓶 敏
- 現代日本資本主義の構造的危機分析 藤田 実
- 戦後70年の労働運動と社会運動ユニオニズム:日本における伝統の検証とその再生のために 兵頭淳史
- 戦後日本資本主義「失われた20年」:都市と農村、二つの限界集落 涌井秀行
[論文]
- スペインにおける労働市場改革の効果:オークン法則を利用した実証分析 畠山光史
- 長時間労働と経済成長 間宮賢一
- 労資はいかに生産成果を分配するか:経済実験によるアプローチ 徳丸夏歌・宇仁宏幸
[海外学界動向]
- 世界政治経済学会第10回大会に参加して 松井 暁
[書評]
- 森田成也著『家事労働とマルクス剰余価値論』 佐藤拓也
- 徳永昌弘著『20世紀ロシアの開発と環境:「バイカル問題」の政治経済学的分析』 林 裕明
- 関下 稔著『米中政治経済論:グローバル資本主義の政治と経済』 藤木剛康
[書評へのリプライ]
- 『グローバル化時代の日本経済』に対する書評[評者=海野八尋氏]へのリプライ 菊本義治・山口雅生
論文の要約(英文)
刊行趣意・投稿規定
編集後記 西 洋
- 特集にあたって
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今年は「戦後70年」、集団的自衛権を認める安保関連法案の成立で文字通り大きな節目の年となった。本特集は20年前の「戦後50年」特集との関連で「戦後70年」の日本資本主義の現局面を分析しようとしたものである。
(中略)
「戦後50年」との比較において「戦後70年」の日本資本主義の現局面を見る時、危機の深化と共に、90年代半ばが日本資本主義にとって大きな転換点であったことに改めて気付かされるのである。バブル崩壊後構造的危機が叫ばれる中、資本はそれへの対応を準備していたといえるのではあるまいか。
(中略)
戦後50年、90年代半ばを転機とする労働者を犠牲とした資本の上からの危機への対応が危機をさらに深めた形でその全貌を現した、それが戦後70年の日本資本主義の現局面といえるのではあるまいか。それへのわが国農業のあり方を含めた「対抗構想」をどうするか。藤田論文は「蓄積=成長構造の危機をグローバル化と経済の軍事化で乗り越えようとする資本に対して、労働運動は、対抗勢力たりえず、労働者・国民的立場からの危機打開について展望を見いだせていない」とし、「変革主体としての労働運動は再生するのだろうか」と問うている。この点を立ち入って論じたのが兵頭論文である。兵頭論文は「日本の左派労働組合がその歴史において『反戦・平和』といった課題を最も重点的に取り上げていたことは、単なる特殊性としてではなくその先駆性を評価するといった観点での再検討をわれわれに迫っている」と指摘している。本特集がこうした方向での議論が深まるきっかけになるのであれば、編集担当として望外の喜びである。
(矢吹満男)
- 編集後記
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特集テーマを、「戦後70年:日本資本主義の現局面」と題し『季刊 経済理論』52巻第4号をお届けいたします。スケール感にあふれたテーマのもと、この70年間に日本経済は様々な経験をしたことが国際、農村・都市、労働の側面から構造の側面まで多面的に論じられております。1980年生まれのわたしが経験したのは、こうした激動のダイナミズムのほんの一局面にすぎません。わたしが研究するマクロ経済学で登場するのは多くの場合、一意の集計的成長率や失業率、物価変化率などです。このようないわばドライな変数だけでは決して捉えることができないドラマがこれまでの日本経済にあったことが、特集論文から読者の方々に伝わることを願っています。執筆いただいた4名の会員にはこの場を借りてお礼を申し上げます。また、本特集を担当された矢吹満男委員もお疲れ様でした。
さて、2014年12月より本誌の編集委員を仰せつかり、はや一年が経とうとしています。ようやく、この仕事に慣れたところに、編集後記執筆の当番が回ってきました。はて、なにを書こうか迷いましたが、今回の編集後記では、差しさわりの無い範囲内で編集委員会の一日を紹介してみたいと思います。投稿者の多くは、いったいどのように投稿した論文が審査されているのであろうかと、採択の可否を案じながら、一度は疑問に思ったこともあるかと思います。バックナンバーでも編集委員会の様子は断片的に触れられていますが、今回はもう一歩踏み込んで大域的に進行といった形式的なところを簡単に紹介してみたいと思います(編集委員会の審議の内容については、もちろん詳しくは語れませんがご了承ください)。
実際の編集委員会は、編集委員長の司会で進みますので、審議の手順は委員長ごとにさまざまかもしれません。ここ数回は、専修大学神田キャンパスにて、午前11時に委員会は開始されます。委員会は、綿密に準備された開催要項にしたがって進められます。毎回あたらしく加わる編集委員の紹介、機関誌発行状況の報告へとすすみ、最初の山場として、これまでに受理した投稿論文についての審査・判定が行われます。各投稿論文を担当する編集委員が、レフェリーレポートをもとに報告を行い、それをもとに編集委員全員による慎重な審査にもとづいて総合判定を決定します。この審査は時間をかけて行われるために、気がつけば13時を回っていることがほとんどです。おなかもへったところで、編集委員はおおよそこぞって、近所のお店に向かい、ランチをシェアします(どうやら編集委員会の伝統的な行きつけのお店のようです)。
昼食後には、次の山場である新規投稿論文の審議が始まります。これについて、テーマと研究内容に即して、編集担当者を決め、担当者の提案に基づいてレフェリー候補者を選出し、審議・決定します。同様に、編集委員会で取り上げる書評についても、著書の内容をもとに、編集担当者と書評者の候補を、審議・決定します。メール等でレフェリーや書評者の打診を受けた会員もいらっしゃると思いますが、このような過程を経てお伺いに至っております。
その後、機関誌発行のスケジュールについて確認していきます。ここでの主な作業は、特集号を担当する編集委員から企画の主旨説明や執筆者の紹介およびその審議です。そして最後に、次回の編集委員会の日時と場所を決定して、編集委員会は閉会します
編集委員会の日は、委員にとって非常に密度の濃い一日です。編集委員長は、司会進行に加えて、投稿者、レフェリー、発行を支えてくださっている桜井書店とのコンタクトも行うので、負担はさらに大きくなります。こうした事情もあって、委員会終了後は、その労をねぎらう時間がもたれます。これは、ご想像に難くないかと思われます。
編集委員会の一日はおおよそこうしたものです。さて、わたしも、この一年間に、数本の投稿論文の担当をさせていただきました。その過程において、レフェリーをお引き受けくださった会員の方々には、期日を守って審査を厳密に行っていただいていることに感謝申し上げます。そして、編集委員会からの厳しいコメントに対して、投稿者から誠意をもって改善されて再提出されてくる論文が、再審査の結果、採択されることは、とても嬉しく思います。投稿者のこうした丁寧な対応に反省を学び、自らの研究姿勢を律さなければと感じながら、新幹線で帰途に就くというのがわたしの編集委員会の一日です。
(西 洋)
- 編集委員
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委員長
- 竹内晴夫(愛知大学)
副委員長
- 坂口明義(専修大学)
編集委員
- 勝村 務(北星学園大学)
- 佐々木啓明(京都大学)
- 関根順一(九州産業大学)
- 田中英明(滋賀大学)
- 鳥居伸好(中央大学)
- 西 洋(阪南大学)
- 宮田惟史(駒澤大学)
- 矢吹満男(専修大学)
経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。