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季刊 経済理論 第50巻第2号(2013年7月) 特集◎アメリカ資本主義の世界史的位置:ポスト冷戦20年のなかで考える
季刊・経済理論第50巻第2号

経済理論学会編

B5判並製/114頁
ISBN978-4-905261-69-8
定価2100円(本体2000円+税)
発行
2013年7月20日

目次

[特集◎アメリカ資本主義の世界史的位置:ポスト冷戦20年のなかで考える]

  • 特集にあたって:ポスト冷戦20年の世界史像を素描する 後藤康夫
  • 覇権国家アメリカの盛衰:ポスト冷戦20年の位置づけによせて 柿崎繁
  • ポスト冷戦期におけるアメリカ的ラウンドの構図:資本のNet対応(資本主義的利用)をめぐって 原田國雄
  • 米中政治経済関係の新局面:対米投資促進と国家安全保障強化の間のアメリカのジレンマ 関下稔
  • アメリカ反資本主義運動の位置:マルクス派の理論と直接行動派の倫理をめぐって 大屋定晴

[論文]

  • 資本主義の不純化と多様化:小幡道昭の批評に答える  山口重克
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[研究ノート]

  • 自己回帰的生産構造における平均生産期間の規定問題:柴田敬の試みと松尾匡による定式化との関係 西 淳
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[書評]

  • 西部忠著『資本主義はどこへ向かうのか:内部化する市場と自由投資主義』  山田鋭夫
  • 小幡道昭著『マルクス経済学方法論批判:変容論的アプローチ』  田中英明
  • 保坂直達著『資本主義とは何か:21世紀への経済地図』  若森章孝
  • ナオミ・クライン著/訳=幾島幸子・村上由見子『ショック・ドクトリン:惨事便乗型資本主義の正体を暴く(上)(下)』 足立眞理子
  • 鈴木和雄著『接客サービスの労働過程論』  竹永進
  • 山本和人著『多国間通商協定GATTの誕生プロセス:戦後世界貿易システム成立史研究』  萩原伸次郎
  • 関下稔著『21世紀の多国籍企業:アメリカ企業の変容とグローバリゼーションの深化』  井上博

[書評へのリプライ]

  • 『なぜドル本位制は終わらないか』に対する書評(評者:柴田コ太郎氏)へのリプライ 岩野茂道
  • 『交響する社会:「自律と調和」の政治経済学』に対する書評(評者:西部忠氏)へのリプライ 井手英策・菊地登志子・半田正樹

経済理論学会「第61回大会」のご案内 大会準備委員会

経済理論学会「第1回 若手セミナー」のお知らせ 幹事会

論文の要約(英文)

刊行趣意・投稿規定

編集後記  吉村信之

特集にあたって

本特集は、……ポスト冷戦20年の世界像について、アメリカ資本主義の世界史的位置に即して解明してみようと、編集されたものです。掲載論文は、2回にわたる検討会のなかで執筆されています。

冒頭の柿崎論文は、総論とも言うべきもので、史的展開を試みながら、冷戦帝国主義アメリカの生産力基盤の盛衰からポスト冷戦世界を展望しています。続く原田論文では、冷戦帝国主義アメリカのなかから生育してくるネット新世界が検出され、その社会的な担い手にも言及しつつ、アメリカ資本主義の独自性、そしてポスト冷戦の過渡性が浮き彫りにされます。関下論文では、米中双軸・Chimercaなるものの実態が、中国の対米投資に即して実証的に分析され、米中の「依存と対抗」、「グローバリゼーションと国家」なる問題が具体的に提起されます。最後の大屋論文では、アメリカにおけるグローバルな対抗運動を取り上げ、その新しい特徴が、マルクス派と直接行動派との対話の形で解明されます。

これを機会に議論が拡がり、私たちの歴史認識が深まることを期待しています。

(後藤康夫)

編集後記

第50巻第2号をお届けする。本号の特集は「アメリカ資本主義の世界史的位置」である。1991年のソ連崩壊による冷戦終結から20年余の年月が経過したが、その間、対抗馬を失ったアメリカ発の新自由主義は、後顧の憂い無く自由化・市場化の波を「グローバリゼーション」の名のもとに世界全体に拡大してきた。これを理論的に支えている新古典派経済学も、IMFなどの国際機関からアカデミズムに至るまでその影響力を拡め再び主流派としての地歩を固めており、とりわけ経済学の世界では、マルクス派はもちろん良心派ケインジアンまでも悉く駆逐しあるいは変質させながら、新古典派の提唱する手法と理念を唯一無二の社会的処方箋とする一元的な理論上の「発展」が、この20年の自由化・市場化の現実的進行と軌を一にするかたちですすんでいった。 その勢いはいま現在においてもなお継続しているが、しかし同じくアメリカを淵源とした2007年以降の金融危機の勃発とその後の一連の財政危機・リセッションの発生は、新自由主義がもたらした格差や不平等の社会的猖獗とともに、「ポスト冷戦20年」の間のこうした社会的基調に対して、一定の反省を呼び起こす契機となったといえるだろう。本特集は、その意味で冷戦終結後のここ20年の「アメリカ資本主義」とその位置付けを捉えかえすための時宜を得た企画であると思われる。

私事に渉るが、編集委員を拝命し一年以上が経ったものの、いまだ門前の小僧の感が抜けず、編集委員会の席上では委員の方々のすぐれた事務能力や鋭い問題意識にはいつも圧倒される。しかしそんな鈍い私でさえ、金融危機以降の昨今の状況は、それ以前に目にしてきた20年来の社会的風潮とはいささか変わって見える。日頃接する学生の反応を見ても、本号に書評が掲載されている『ショック・ドクトリン』などをゼミで輪読すると非常な興味を示すし、講義で格差や搾取、金融危機などといったテーマを語ると、学生の目は真剣になる。「流れは変わった」とまでは言えないにしても、過去20年間の新自由主義による思想支配からの確実な変化が現れてきていると感じられる。本号の特集が、そうした変化をもたらしている主因であるアメリカ資本主義の変貌の現状を解明するための一助となることを、編集委員の一人として願ってやまない。

本号の特集の企画・立案から4人の論文執筆者の人選・依頼までは、すべて後藤康夫編集委員の手になるものであり、本号の副担当である私は、この編集後記を書く以外まったく何の仕事もしていない。そのようなことを書くと普通は謙遜が多少なりとも入っているものだが、自慢できることではないがこの点は掛け値なしに本当である。後藤委員の労に深く感謝申し上げる。

なお本号では、特集論文のほかに論文と研究ノートが2本掲載されている。掲載できる論文数が少ないことは、いつも編集委員会の悩みの種である。会員諸氏には是非とも本誌への投稿を考えていただくよう切にお願い申し上げたい。

年4回の学会誌の発行は、多くの人の無償の献身によって支えられている。大きな責任をかかえ数多くの仕事をこなしている編集委員長をはじめ、特集担当者や編集委員の皆さん、あるいはお忙しいなか他人の論文を評価するという非常に疲れる作業を快諾して下さる査読者の方々のご苦労には、毎回頭が下がる思いである。省みて自らの仕事ぶりには忸怩たる思いがあるが、私もせめて残された期間に少しでも本誌編集へ貢献したいと決心している次第である。最後に、困難な出版状況のなか、こうした学術誌の出版の労を一身に引き受けておられる桜井書店の桜井氏に心より御礼申し上げる。

(吉村信之)

編集委員

委員長

  • 鈴木和雄(弘前大学)

副委員長

  • 亀崎澄夫(広島修道大学)

編集委員

  • 大野 隆(立命館大学)
  • 後藤康夫(福島大学)
  • 酒井正三郎(中央大学)
  • 竹野内真樹(東京大学)
  • 原田裕治(福山市立大学)
  • 藤田真哉(名古屋大学)
  • 前畑憲子(立教大学)
  • 矢吹満男(専修大学)
  • 吉村信之(信州大学)

経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。