- 季刊 経済理論 第50巻第1号(2013年4月) 特集◎大震災・原発問題と政治経済学の課題
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経済理論学会編
B5判並製/124頁
ISBN978-4-905261-68-1
定価2100円(本体2000円+税)
発行
2013年4月20日 - 目次
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[特集◎大震災・原発問題と政治経済学の課題]
- 災害論の構成:東日本大震災をふまえて 宮本憲一
- 原発災害の政治経済学 吉田文和
- 2011年グローバルな占拠運動の人類史的意義:フクシマと世界を貫くネット新世界,主体,そして変革像 後藤康夫
[特別寄稿]
- グリーンニューディールの構築:合衆国の場合 ロバート・ポーリン/訳=山口系一
[論文]
- 労働賃金の基礎理論:実証主義的考察 馬渡尚憲
[書評]
- 飯田和人編著『危機における市場経済』 後藤康夫
[書評へのリプライ]
- 『マルクスのアソシエーション論』に対する書評(評者:宮田和保氏)へのリプライ 大谷禎之介
- 『中国の経済発展と制度変化』に対する書評(評者:平川均氏)へのリプライ 厳成男
経済理論学会第60大会報告
経済理論学会第60大会報告(英文)
経済理論学会第60大会分科会報告
経済理論学会2012年度会務報告
第3回(2012年度)経済理論学会奨励賞 八木紀一郎
第4回(2013年度)経済理論学会奨励賞募集要項 選考委員会
2013年度 経済理論学会第61回大会の開催について 大会準備委員会
論文の要約(英文)
刊行趣意・投稿規定
編集後記 鈴木和雄
- 編集後記
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昨年12月から憂鬱な気分になっている。12月に行われた衆院選で、原発を止めようとせず、新増設も認めかねない自民党が圧勝したからだ。今年の正月には、これを憂えた本学会の多くの会員からの年賀状をいただいた。思いはまったく同じだったわけである。
福島の「核災」による避難民は、元からの生活状態を破壊され、避難し、職を失い、仮設住宅での不便な、場合によっては家族が複数世帯に分かれた生活を余儀なくされ、集団移住した移住先でも「被災者帰れ」といった心ないあつかいを受けていると聞く。また地元に残った人びとも、避難民の増加による住民の減少によってコミュニティ生活そのものが維持できないという深刻な事態にいたっている。しかしなによりも憂うべきは、未来を担う子供を育てる環境が完全に破壊され、戸外で遊ぶこともままならず、屋外活動の制限、外出の際は長袖長ズボンや帽子やマスクを着用しなければならないという異常事態そのものである。本号の大会報告や討論でも、福島の子供の甲状腺異常やがんに触れているが、甲状腺がん罹病者やその疑いのある子供が続いている。
しかも放射能汚染対策はまだなんのめどもたっていない。政府は、汚染土などを最長30年間保管するための中間貯蔵施設の候補地を公表しながら、最終処分施設については宙に浮いたままである。汚染土だけではない。汚染水も、そもそも事故を起こした原発を廃炉にする手順や方法や時期についてすら、廃炉技術が未確立のなかで30〜40年後までの曖昧な計画しか示されず、なんの展望もみえていない。要するに、事故処理の方策はなにも整えられていないのであり、放射能汚染の不安はなにも解消していないのである。
それなのに原発を再稼働しようとする政治勢力が政権をとってしまった。「2030年代に原発稼働ゼロ」をめざすとした民主党政権にもアメリカは原発推進の圧力をかけたが、日米同盟の修復をめざし、原発を死守しようとする財界の期待を背負った自民党が、原発推進に赴く可能性はきわめて高い。なお悪いことは、その自民党が国民の支持を広げているという事実である。自民党と公明党の連立内閣は、今年2月初めの世論調査でも63%という発足時より11ポイント高い支持率となり、不支持率も同7ポイント低い19%に低下させた。さらにある全国紙の世論調査では、民主党政府が掲げた「2030年代に原発稼働ゼロ」を見直すと表明した安部首相の方針は、「支持する」が56%で、「支持しない」が37%だった。国民は福島の惨状をもう忘れたのか、あるいは、それに顔をそむけているのか。
だが、移り気な国民を一時的にはだませても、放射能汚染が存在し拡大しているという自然科学的事実は隠しとおせるものではない。セシウム137の半減期はいぜんとして30年であり、プルトニウムは2万4千年なのである。この事実を直視し、原発政策のあり方を科学的に問題にしていく本学会の存在は、いよいよ重要となっているように感ぜられる。
(鈴木和雄)
- 編集委員
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委員長
- 鈴木和雄(弘前大学)
副委員長
- 亀崎澄夫(広島修道大学)
編集委員
- 大野 隆(立命館大学)
- 後藤康夫(福島大学)
- 酒井正三郎(中央大学)
- 竹野内真樹(東京大学)
- 原田裕治(福山市立大学)
- 藤田真哉(名古屋大学)
- 前畑憲子(立教大学)
- 吉村信之(信州大学)
経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。