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季刊 経済理論 第48巻第1号(2011年4月)  特集◎社会経済システムの変革と政治経済学の課題:日本は変わるか
季刊・経済理論第48巻第1号

経済理論学会編

B5判並製/140頁
ISBN978-4-921190-79-8
定価2100円(本体2000円+税)
発行
2011年4月20日

目次

[特集◎社会経済システムの変革と政治経済学の課題:日本は変わるか]

  • グローバル資本蓄積の矛盾とエコロジカル社会主義 長島誠一
  • 新たな資本主義の勃興と原理論の課題 小幡道昭
  • 社会主義の過去と未来:科学・闘争・規範 森岡真史
  • 一般討論

[特別寄稿]

  • 就労構造,グローバリゼーション,経済危機
    -今日の雇用動態を再考する(日米に焦点を合わせて) ジェームズ・ハインツ/訳=岡部洋實

[論文]

  • 一般的利潤率の傾向的低下法則と恐慌:『資本論』第3部第3篇草稿(MEGAU/4.2)を通じて 宮田惟史
  •                        
  • 累積的因果連関と構造変化:カルドアとパシネッティに基づく成長モデル 宇仁宏幸

[書評]

  • 涌井秀行著『戦後日本資本主義の根本問題』 山田鋭夫
  • 建部正義著『金融危機下の日銀の金融政策』 前畑雪彦
  • 毛利良一著『アメリカ金融覇権 終りの始まり:グローバル経済危機の検証』 大森拓磨
  • 森田成也著『価値と剰余価値の理論:続・マルクス剰余価値論の再構成』 櫛田 豊

[書評へのリプライ]

  • 『市場と恐慌』に対する書評(評者:長島誠一氏)へのリプライ 高橋 勉
  • 『管理通貨と現代資本主義』に対する書評(評者:大西 広氏)へのリプライ 金谷義弘

第58大会報告

第58大会報告(英文)

第58大会分科会報告

会務報告

第1回(2010年度)経済理論学会奨励賞受賞について

論文の要約(英文)

第2回経済理論学会奨励賞募集要項

刊行趣意・投稿規定

編集後記(岡部洋實)

編集後記

第48巻第1号をお届けします。本号は恒例により、昨年秋に関西大学経済学部で開催された、経済理論学会第58回全国大会(2010年10月23日〜24日)の特集号です。

この大会の共通論題は、「社会経済システムの変革と政治経済学の課題-日本は変わるか」でした。第56、57回の2大会は、サブプライム・ショックならびに2008年恐慌と資本主義世界の行方を考えるという、まことに時宜を得た現状分析がテーマでしたが、今回は、それらからやや距離をとっています。それは、2008年恐慌によって「新自由主義(あるいは金融資本主義)というひとつの歴史が終わり、ポスト新自由主義の構想とパラダイムが求められているという認識に立ち、日本を舞台にして社会経済システムの新しい可能性と変革のゆくえを探ること」(大会準備委員会)を目指したからです。

共通論題は、3名の報告を基に進められました。長島誠一会員は、マルクス経済学こそ、深刻化する環境問題のしわ寄せを貧困層に集中させているグローバル資本主義を告発し、維持可能な社会経済システムとしてのエコロジカル社会主義を提起しうるにふさわしいと主張されます。小幡道昭会員は、資本主義の原理において捉えることのできる分解作用・浸透作用・柔軟性に着目し、それらを通じた資本主義の《熟成》が新たな社会主義を準備するのだと捉え、先進資本主義諸国にその契機が内包されている可能性を提起されます。森岡真史会員は、学説・思想史と歴史的経験を踏まえて、21世紀の社会主義思想は、必然論ではなく、生存・発達の権利の豊富化とその実現を目指す規範、現代諸憲法におけるそれらの承認・拡大に歴史的前進を見出すべきだとして、歴史観の転換を訴えられています。

特別寄稿では J. Heintz 氏が、主に先進国における雇用問題を世界的な視野で論じてくださいました。氏が最後に提起された政策的含意もまた、従来からの通念を破ろうとするものであり、上の3名の方々の論点と重なり合うものをもっています。

それぞれの詳細については各論文をお読みいただくとして、いずれも、政治経済学としてのマルクス経済学、それと不可分の関係にある社会主義や雇用のあり方に、強く反省を迫る魅力的な内容をもつものといってよいでしょう。こうした学問的な省察が、貧困や新たな社会問題に向き合いながら日々を懸命に生きる人々に希望をもたらす、よりよい世界の実現のための礎となることを願ってやみません。

第58回大会では、第1回学会奨励賞の授与式が執り行われました。これを出発点として、若い研究者の皆さんの今後の活躍と、それを通じた本学会の発展を期待したいと思います。

(中略)

2011年3月11日に東北・北関東地方の太平洋沿岸を襲った地震と津波は、未曾有の被害をもたらしただけでなく、それによる原発の損壊は、多くの人々を深い不安へと陥れました。前者が、自然力の脅威を私たちに改めて認識させるものであったとすれば、後者は明らかに人災であって、過剰なほどの物質的な豊かさの支えを、巨大な官僚制営利企業と未完の危うい技術に任せる現代の社会体制のあり方に、強い警鐘を鳴らすものです。

本学会会員・本誌読者の中には、被害地域に住まわれるだけでなく、ご家族・親戚、ご友人・知人が被害に遭われたという方も少なくないことと思われます。この場を借りて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々とそのご家族に、心からお見舞い申し上げます。人々の支援の輪が広がり、一日も早い復旧復興のもたらされることを願わずにはいられません。

(岡部洋實)

編集委員

委員長

  • 岡部 洋實(北海道大学)

副委員長

    磯谷明徳(九州大学)

委員

  • 角田修一(立命館大学)
  • 後藤康夫(福島大学)
  • 柴田 透(新潟大学)
  • 清水真志(専修大学)
  • 遠山弘徳(静岡大学)
  • 新田 滋(茨城大学)
  • 福島利夫(専修大学)
  • 松尾 匡(立命館大学)

経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。