- 季刊 経済理論 第46巻第1号(2009年4月) 特集◎サブプライム・ショックとグローバル資本主義のゆくえ
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経済理論学会編集
B5判並製/144頁
ISBN978-4-921190-71-2
定価2100円(本体2000円+税)
発行
2009年7月20日 - 目次
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[特集◎サブプライム・ショックとグローバル資本主義のゆくえ]
--経済理論学会第56回大会の報告と討論--- 開会の辞 唐渡興宣/萩原伸次郎
[報告]
- アメリカ発のグローバル金融危機--グローバル資本主義の不安定性とアメリカ河村哲二
- 金融サイドから見たサブプライムローン・ショック建部正義
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アメリカの消費から見たサブプライムローン問題の本質
--アメリカにおける過消費構造と家計債務(モーゲージローンと消費者信用)の現状姉歯 暁
[報告へのコメント]
- 井村喜代子
[コメントへのリプライ]
[一般討論]
[特別寄稿]
- 歴史的パースペクティブからみたサブプライム危機--レギュラシオン学派からの分析ロベール・ボワイエ/訳=西 洋
[論文]
- IT化・グローバル化と賃金格差拡大との関連宇仁宏幸
- ヴィジョンとしての「経済進化」の継承瀬尾 崇
[研究ノート]
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英米農民研究の一潮流から学ぶ現代農業研究の課題
--Journal of Agrarian Changeのワークショップに参加して記田路子
[書評]
- SGCIME編『グローバル資本主義と景気循環』森 恒夫
- 吉原直毅著『労働搾取の厚生理論序説』藤森頼明
[書評へのリプライ]
- 環境被害の責任と費用負担』に対する書評へのリプライ除本理史
[第56回大会報告]
- 第56回大会報告(英文)
- 第56回大会分科会報告
- 会務報告
論文の要約(英文)
刊行趣意・投稿規定
編集後記(小松善雄)
- 編集後記
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アメリカのサブプライム(低所得者向け住宅融資)問題に端を発した世界金融危機は08年,世界同時恐慌に発展,09年に入っても景気の底が見えないばかりか,底割れの日々が続いている。
新自由主義的規制緩和の破綻のツケは国家介入の再起動となり,アメリカのシティグループ,バンク・オブ・アメリカ,イギリスのRBSには不良債権の政府保証のもとで公的資金が追加注入され,実質的に政府管理へと進み,イギリスのノーザン・ロックは国有化されている。さらにここに来て保険の最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)へは資本注入が400億ドルから700億ドルへと増額されたが,企業の倒産リスクを売買するデリバティブ(金融派生商品)であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は流動性を失い,時価が下落,それがまた金融機関の損失を増大させる悪循環が断ち切れていない。
アメリカではレイオフなど雇用者数の減少=失業率の上昇が消費減退─企業の売上げ減少─さらなる雇用抑制という悪循環が強まっている。
日本でも東京株式市場で日経平均株価がバブル後最安値を付けたが,それでも安値更新は避けられない見通しである。そうしたなかで,厚生労働省の調べでは3月末までに非正規従業員が約15万人失職するとみられているが,2008年度決算で業績悪化が鮮明になるなら正社員削減がいっそう進む情勢にある。での均等性の問題から、航空産業では多国籍企業のグローバルな展開が全面的自由化の形態をとるのではなく、四大陸の代表企業からなる国際間の三大グローバル・アライアンスが形成されていることに着目している。
こうした出口のみえない恐慌の最中、経済学の世界でも異変が起こっている。かつて新自由主義─グローバル資本主義の旗振り役であった中谷巌氏が「『悪魔の碾き臼』としての市場社会」を弾劾する懺悔の書『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル、2008年12月)を出版,09年3月9日付の『毎日新聞』文化欄の「語る」では「経済学の中で最もマルクスと遠いはずの新古典派だが,マルクスの資本主義分析には,正直なところ,学ぶべきものがあります」と語っている。調達に維持に求めている。この立場から、筆者は、多国籍企業やアグリビジネスによる農産物市場のグローバルな統一化要求と独自の土地所有形態・農業生産形態を持つアフリカ、アジア諸国の農業維持政策との対立を描き出している。
今回,読者にお届けする第46巻第1号は,マルクスの資本主義分析の方法と理論を継承する経済理論学会の第56回大会での共通論題「サブプライム・ショックとグローバル資本主義のゆくえ」に関する3氏の報告と討論を中心に,19の分科会報告を含む大会報告を中心に編集されている。また今号には,フランス社会科学高等研究院ロベール・ボワイエ教授の大会での特別報告をもとにした論文「歴史的パースペクティブからみたサブプライム危機」も収録されている。管理の徹底=リスクの社会的転嫁・分散が金融システム総体としてのリスク総量を膨張させ、自己資本比率規制を有名無実化させた。筆者は、新たな金融規制は、貨幣資本の投機性と略奪性の制限にまで踏み込まなければならないと主張する。
共通論題での報告と討論はもとより、各分科会での報告と討論、あるいは掲載の各論文は,いずれも現代資本主義の諸問題に切り込む性格をもっている。歴史としての現在をどう捉えたらよいか,ここにはその問いに対する多彩なアプローチがちりばめられており,読者に示唆するところ多大であると信じている。段階に戻すことによって派遣労働を一定の制限下におき、有期雇用についても制限を強化し、さらに、非正規雇用の収奪的利用を排除するために同一労働同一賃金原則の確立に基づく転職可能な「ジョブ型正社員」への移行を提案している。
本誌に寄稿してくださったボワイエ教授とその翻訳の労を取ってくださった西 洋会員に感謝申し上げます。
(小松善雄)
- 編集委員
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委員長
- 小松 善雄(東京農業大学)
副委員長
- 岡本 英男(東京経済大学)
委員
- 池田 毅(立教大学)
- 石倉 雅男(一橋大学)
- 佐藤 隆(大分大学)
- 佐藤 良一(法政大学)
- 清水 真志(専修大学)
- 長島 誠一(東京経済大学)
- 新田 滋(茨城大学)
- 米田 貢(中央大)
経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。