- 季刊 経済理論 第41巻第3号(2004年10月) 特集◎<帝国主義>と戦争
-
経済理論学会編
B5判並製/110頁
ISBN4-921190-82-8
定価2100円(本体2000円+税)
発行
2004年10月20日 - 目次
-
[特集◎経済学の規範理論]
- 現代(ポスト冷戦期)帝国主義をめぐって二瓶 敏
- アメリカ帝国主義の特質馬場宏二
- 「修正帝国主義」から「新帝国主義」へ--宇宙から「地球戦争」を始めたブッシュ新戦略の意味藤岡 惇
- 「新しい戦争」とアメリカ体制の衰退増田寿男
[海外学界動向]
- 「韓国社会経済学会2004年夏期学術大会」に参加して鄭淵沼
[論文]
- 利潤率の均等化と交差調整森岡真史
- 貨幣的循環理論と流動性選好内藤敦之
- 中国春秋戦国期における商品経済の歴史的生成楊立国
[書評]
- SGCIME編『国民国家システムの再編』石塚良次
- 和田 豊著『価値の理論』張忠任
- 宮田和保著『意識と言語』神山義治
- アントニオ・ネグリ著/清水和巳・小倉利丸・大町慎浩・香内力訳『マルクスを超えるマルクス』内田 弘
[書評へのリプライ]
- 『土地支配の経済学』に対する書評(評者:森岡真史氏)へのリプライ関根順一
- 『情報資本主義論』に対する書評(評者:福田豊氏)へのリプライ北村洋基
論文の要約(英文)
経済理論学会第52回大会プログラム
刊行趣意・投稿規定
編集後記(半田正樹・大西 広)
- 編集後記
-
ちょうど3年目の「9.11」が巡ってきた直後、パウエル米国務長官が上院政府活動委員会の公聴会で、イラク開戦の最大の根拠としていた大量破壊兵器について「備蓄の発見に至っていないし、今後も見つかることはないだろう」と証言した。<覇権国>アメリカの暴力性、破壊性、無定見は目に余るというほかない。
本号では「9.11」を境に、現代の世界政治経済システムがどのようなベクトルを持ち始めたのか、「パックス・アメリカーナの衰退」「冷戦体制の崩壊」「グローバリゼーション」「原理主義(ファンダメンタリズム)とアメリカ」「新しい戦争」等々、のキーワードに対応するような「現代世界」をどう剔抉し、いかに歴史的に位置づけるのか、このような問題意識のもと、特集として「<帝国主義>と戦争」を企画した。経済理論学会が「純理論」にとどまらず「現代の資本主義」そのものをトータルに分析することも射程に入れた<総合学会>にほかならないことを示したいと考えたからでもある。執筆は、4人(当初は5人)の方にお願いしたが、どの論考も、昨今話題の<帝国>(ネグリ&ハート)に対しては距離をおいた、ないしは批判的視点を湛えた議論を展開しているのが印象に残る。現代の世界政治経済秩序を、“ネットワーク状に配分された権力形態”としての<帝国>と見なすことの問題を凝視した結果なのであろう。むろんネグリ&ハートの議論は一方で<帝国>を“打倒する”主体としての越境者“マルチチュード”を宣揚している。こうした概念も俎上に載せながら現代の世界政治経済システムについての論争が、今回のこの特集を契機に巻き起こることを大いに期待したいと思う。それは、経済学における批判的な研究のための公器を提供するという本誌のコンセプトにも似合うものと確信する。
「海外学会動向」として、今回は「韓国社会経済学会」(鄭淵沼稿)が寄せられた。議論が国のボーダーを越えて広がりつつあるのを実感する。
ところで、本号は年報から季刊化されて第3号目にあたるが、3本の投稿論文を掲載することができた。第1号から第3号までのいわゆる編集データ(Editorial Data)を簡単に記しておけば、投稿数が22本(論文21、書評1)、掲載数が10本、継続審査2本ということになる。さらに第4号以後の掲載を前提にした投稿のうち、すでに4本の審査結果が出ており、さらに12本がレフェリーのもとにある。つまり、企画論文といういわば編集委員会による“お仕着せ”のものではなく、会員の自立した、創意に富んだ論考が、そして何よりもそれぞれがポレミックな性格を持ち“議論創発” 的であるところに特長をもつ論考が誌面を埋めることが望むべき状態であるとすれば、それにようやく近づきつつあるといえるように思う(本号には、本誌書評へのリプライが2本寄せられたが、これも本格的な論争へのきっかけになればと期待したい)。問題は、随時受付に対応する的確な処理体制が必ずしも十分ではない点にある。投稿後、約7か月で掲載誌が刊行されるという基本は守られていると判断していただけると思うが、投稿のタイミングによってはかなりの遅れが出るのも否定できない。編集会議の頻度との関係で、編集会議直後に受け付けた原稿が次回の編集会議まで処理を待つ状態になることが避けられないからである。このようないわゆるバッチ処理体制をリアルタイム処理へと転換できれば問題は解決するが、それがなかなか困難だというのが現実である。そこで、どのような名案があり得るのか、その検討に入ったことをご報告しておきたい。厳正なレフェリー制によってクオリティを確保し、これをベースに投稿論文を基軸とする学会誌を定着させるべく何らかの工夫を試みたいと思う。しばしの時間的猶予をいただきたい。
もう一つ、英文目次の姓名の表示についてお断りしておく。本号では、姓と名の順序は執筆者の意向を優先することにした。ただし姓はすべて大文字で表し、名は頭文字のみを大文字とすることで区別した。英語を母語としない者にとっては、英語はあくまでも便宜的な表現媒体に過ぎず、文化の問題と考えるべき自分の名前表現(アイデンティティの確保)は自分の主体性のもとで行いたいという見方を尊重したかったからである。会員諸氏のご意見をいただければと思う。
(半田正樹・大西 広)
- 編集委員
-
委員
- 植村高久(山口大学)
- 宇仁宏幸(京都大学)
- 大西 広(京都大学)
- 岡本英男(東京経済大学)
- 竹永 進(大東文化大学)
- 芳賀健一(新潟大学)
- 原 伸子(法政大学)
- 半田正樹(東北学院大学)
- 松井 暁(立命館大学)
- 三土修平 (東京理科大学)
経済理論学会について詳しくは、同学会のホームページ
http://www.jspe.gr.jp/
をご覧ください。