日本経済の長期停滞をどう視るか 菊本義治・齋藤立滋・長島勝廣・林田秀樹・本田豊・松浦章・間宮賢一・山口雅生=著

日本は「好況?」それとも「不況?」
日本経済を景気循環論からみると今は好況であっても
経済の趨勢的視点からは今は不況なのである。
なぜ!
日本経済の問題と課題にズバリ切り込む。
- A5判/上製/194頁
- ISBN978-4-905261-42-1
- 本体2600円+税
著者の言葉
目次
- はじめに(菊本義治・山口雅生)
- 第1章 長期不況下における日本経済の特質と問題点(菊本義治・山口雅生)
- 第2章 長期不況(間宮賢一)
- 第3章 金融部門の肥大化と資産格差の拡大(長島勝廣)
- コラム 貧富の格差は是正されるか
- 第4章 経済をも疲弊させるホワイトカラーの長時間労働:「働き方改革」で労働生産性の向上は可能か(松浦 章)
- コラム 価値観が変わる
- 第5章 長期不況下における所得分配構造(山口雅生)
- 第6章 異次元の金融緩和政策と財政再建(本田 豊)
- 第7章 社会保障と財政再建(齋藤立滋)
- コラム 消費税と社会保障
- 第8章 日本経済のグローバル化:対外直接・間接投資の動向の検討(林田秀樹)
- コラム 東南アジアの田舎にみる日本経済のグローバル化
著者紹介(五十音順)
- 菊本義治(きくもと・よしはる) 1941年生まれ、兵庫県立大学名誉教授:はじめに・第1章執筆
- 齋藤立滋(さいとう・りゅうじ) 1972年生まれ、大阪産業大学経済学部准教授:第7章執筆
- 長島勝廣(ながしま・かつひろ) 1941年生まれ、日本興業銀行などを経て大阪経済大学経済学部教授(2006〜2012年):第3章執筆
- 林田秀樹(はやしだ・ひでき) 1966年生まれ、同志社大学人文科学研究所准教授:第8章執筆
- 本田 豊(ほんだ・ゆたか) 1951年生まれ、立命館大学名誉教授:第6章執筆
- 松浦 章(まつうら・あきら) 1951年生まれ、損害保険会社を経て兵庫県立大学客員研究員:第4章執筆
- 間宮賢一(まみや・けんいち) 1954年生まれ、松山大学経済学部教授:第2章執筆
- 山口雅生(やまぐち・まさお) 1976年生まれ、愛知県立大学外国語学部准教授:はじめに・第1章・第5章執筆
「景気は、輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復している」(2019年7月月例経済報告)として、政府は、高水準の企業収益が、雇用や所得環境の改善を促していることを強調する。一方で、多くの人が景気回復の実感を持てず、暮らしのゆとりは厳しいままである。ここには、周期的な景気循環と、趨勢的な経済成長率低下の両面が混在する。すなわち、景気循環論からみると今は好況であっても、経済の趨勢的視点からは、今は不況なのである。長期不況はバブル崩壊後の1990年代に始まり、戦後最長の好況を記録している今においても、なお続いている。日本はなぜ長期不況から抜けられないのであろうか。
本書のキーポイントは、長期不況、金融資本の肥大化と投機化、グローバル化経済の相互関連を明らかにすることであり、この問題意識は井村喜代子先生(慶應大学名誉教授)から学んだ。本書の第1章がこの点を論じている。とくに長期不況の特徴をマクロ経済の利潤の決定式(貯蓄投資バランス式)から理論的に説明し、企業の過剰貯蓄が金融市場を通じて、金融部門の肥大化および資産運用、海外投資(グローバル化)をもたらしていること、それが国内投資の停滞や長期不況の原因となっていることを統計数字も示しながら明確に論じている。世界的にも経済成長率の低下傾向が観測されているが、日本と同様に企業の過剰貯蓄にその原因が求められていることも論じられる。
第2章以下の各章は、総論といえる第1章の補論・各論ともいうべきものである。