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価値と資本:資本主義の理論的基盤   飯田和人(明治大学教授)

価値と資本:資本主義の理論的基盤

マルクス経済学のバージョン・アップを企図して,価値および資本概念の現代化に取り組んだ長年の理論的格闘の到達点!
キーワードは〈抽象的労働説〉

  • A5判/上製/256頁
  • ISBN978-4-905261-36-0
  • 本体3000円+税
  • 初刷:2017年9月20日

著者の言葉

資本主義経済を動かしている最も基軸的なエレメントは、価値と資本である。これらは、いずれもヒトとヒトとの社会的関係のなかから生み出されながら、逆に経済主体としての人々を動かし、そのことによって資本主義経済を駆動している。本書のテーマは、この価値と資本を徹底的に分析し解明することにある。

価値と資本と言えば、J.R.ヒックスの名著『価値と資本』(1939年)がよく知られているが、本書のテーマはその意味も企図するところもまったく別物である。彼の方法論は正統派の新古典派経済学であり、これに対して本書はマルクス経済学の方法論に拠っている。ここにおいてはまた、価値は労働価値論によって基礎づけられると同時に、資本は自己増殖する価値もしくは自己増殖する価値の運動体として概念規定される。この価値および資本概念に関しては、『資本論』が刊行されてからおよそ150年をへた現在も、マルクス経済学の方法論的立場にたつかぎり基本的に大きな変更はない。

とはいえ、この150年のあいだにいくつかの再検討を余儀なくされる事態が生じていることも事実である。マルクス自身の労働価値論は体化労働説と呼ばれる理論的類型に属するが、これは価値から生産価格への論理的展開において転形問題という大きなアポリアを抱えていたことが明らかになっており、また、価値・価格論の表舞台はもはや自由競争価格たる生産価格論ではなく、寡占・独占価格論ともなっている。さらに言えば、彼の資本概念は19世紀のイギリスで支配的であった企業形態(=個人企業)を基礎にしたものであったが、現代では時代の主流をなす巨大独占企業のほとんどが株式会社資本である。

こうした時代の変化に対応して、本書においては価値論に関しては同じ労働価値論ではあるが、体化労働説ではなく抽象的労働説に依拠することでその現代化を図り、それを踏まえて資本を自己増殖する価値として捉え概念構成し直している。本書の狙いのひとつは、この資本概念を基礎に19世紀イギリスの時代から現代までの企業形態の発展、具体的に言えば個人企業から株式会社資本までの発展を理論的に検証し、それによって資本概念そのものを現代化していくことにある。

目次

  • 第1部 価値と資本:その予備的考察
    • 第1章 価値および資本概念と経済学
    • 第2章 価値と資本循環:体化労働説と抽象的労働説について
  • 第2部 価値と価格の理論
    • 第3章 抽象的労働説と国民所得論
    • 第4章 諸資本の競争関係のなかでの剰余価値率と利潤率
    • 第5章 抽象的労働説と再生産可能価格
    • 第6章 独占価格について
  • 第3部 資本の理論
    • 第7章 資本概念と近代的企業システム
    • 第8章 資本家概念の拡充:危険負担、企業組織および革新の担い手
    • 第9章 資本の所有、経営そして支配

著者

飯田和人(いいだ・かずと)

明治大学政治経済学部教授 
  1948年生まれ
1977年、明治大学大学院政治経済学研究科博士課程単位取得退学
博士(経済学)

著書
  • 『市場経済と価値:価値論の新機軸』(ナカニシヤ出版,2001年)
  • 『市場と資本の経済学』(ナカニシヤ出版,2006年)
  • 『グローバル資本主義論:日本経済の発展と衰退』(日本経済評論社,2011年)
  • 『危機における市場経済』(編著,日本経済評論社,2010年)
  • 『現代資本主義の経済理論』(共著,日本経済評論社,2016年)
  • ほか