戦時インフレーション:昭和12〜20年の日本経済 原 薫著

経済政策と経済実態からみた戦時体制の核心-日中戦争に始まるアジア・太平洋戦争期の日本経済をインフレ政策に焦点をあてて描き出す。かくて戦争は強行された!著者の日本インフレーション研究(4部作)がここに完結。
- A5版/上製/568頁
- ISBN978-4-905261-05-6
- 本体8500円+税
- 初刷:2011年12月15日
著者の言葉
目次
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第1章 通貨供給の拡張の制度的諸要因:昭和6(1931)年〜20(1945)年
- 第1節 金本位制度の停止
- 第2節 日銀の国債引受発行の開始
- 第3節 日銀券発行限度の拡張
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第2章 通貨供給(1):昭和7(1932)年〜11(1936)年
- 第1節 概況
- 第2節 政府ルートの動き
- 第3節 日銀引受国債の市中売却・「消化」
- 付節 国債保有の優遇と低金利政策
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第3章 財政と国債の発行(1):昭和7(1932)年〜11(1936)年
- 第1節 歳出入と国債発行の動き
- 第2節 財政の動き
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第4章 通貨供給(2):昭和12(1937)年〜20(1945)年
- 第1節 概況
- 第2節 政府ルートの動き
- 第3節 金融ルートの動き:日銀貸出の増加
- 付節1 戦時金融統制
- 付節2 軍需融資の推進
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第5章 財政と国債の発行(2):昭和12(1937)年〜20(1945)年
- 第1節 一般会計歳出入
- 第2節 国債の発行
- 第3節 財政運営:昭和12〜20年度
- 第4節 臨時軍事費特別会計の設置とその運営
- 付論 軍需省と軍需会社法
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第6章 通貨の動き:昭和12(1937)年〜20(1945)年
- 第1節 概況
- 第2節 通貨膨張の諸要因
- 第3節 通貨の動きの概括:昭和12〜20年の概括
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第7章 物価:昭和12(1937)年〜20(1945)年
- 第1節 戦時期の物価の動き
- 第2節 物価と物価対策(1):昭和12年〜14年9月
- 第3節 物価と物価対策(2):昭和14年10月〜16年
- 第4節 物価と物価対策(3):昭和17年〜20年 410
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第8章 戦時期の生産と需給状況および軍需:昭和12(1937)年〜20(1945)年
- 補論1 各物資の生産と軍需
- 補論2 企業整備の実施
- 補論3 戦時期の「物資動員計画」:昭和13年〜20年
- 補論4 戦時期の貿易状況:昭和11年〜20年
- 第9章 総括:わが国の戦時インフレーション
著者
原 薫(はら・かおる)
1928年,神奈川県相模原市に生まれる
1951年,法政大学経済学部卒業
1958年,法政大学大学院社会科学研究科経済学専攻,博士課程修了
1953〜68年,法政大学大原社会問題研究所研究員
1968〜95年,法政大学経済学部教授
現在,法政大学名誉教授,経済学博士
- 『現代の通貨』(法政大学出版局,1990年)
- 『戦後インフレーション-昭和20年代の日本経済』(八朔社,1997年)
- 『わが国の現代インフレーション』(法政大学出版局,1991年)
- 『現代インフレーションの諸問題』(八朔社,2001年)
本書は、昭和12(1937)年から20(1945)年、日中戦争の勃発から敗戦に至るアジア・太平洋戦争の時期を主な対象に、この「戦時期」におけるインフレーション問題について、すなわち、この戦時下でインフレがどのようにして発生し進行したか、言い換えれば、当時のわが国の戦争遂行のための財政・金融・経済の運営がいかにしてインフレをもたらし、これを進行させたかについて、考察を試みたものである。なお本書では、この前段として、まず、昭和6(1931)年12月の金本位制度の停止から2・26事件が起こった同11(1936)年に至る時期の記述を加えた。すなわち、日銀券の紙幣化と増発可能化、この日銀券の増発に対応する発券制度の手直し、日銀による国債引受発行の開始(財政の国債依存・日銀依存)などの動きについてであるが、このような通貨供給の増加とこれにもとづくインフレ政策の諸手段はこの時期に形成され、そして、戦争遂行・戦時経済運営の資金調達手段としてこれが大規模に推進されたのが、次の「戦時期」であった、と考えるからである。