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人間発達と公共性の経済学  池上 惇・二宮厚美編
人間発達と公共性の経済学

公共性の再構築による経済社会の改革の展望。

<人間発達の経済学>の提唱から四半世紀
その中心的な論客が現代を読み開き新たな論点に切りこむ。

執筆者(執筆順)
  • 池上 惇(京都大学名誉教授・福井県立大学名誉教授)
  • 柳ヶ瀬孝三(立命館大学経営学部教授)
  • 青木圭介(京都橘大学文化政策学部教授)
  • 森岡孝二(関西大学経済学部教授)
  • 重森 曉(大阪経済大学学長)
  • 成瀬龍夫(滋賀大学学長)
  • 植田和弘(京都大学大学院経済研究科および同大学院地球環境学堂教授)
  • 藤岡 惇(立命館大学経済学部教授)
  • 二宮厚美(神戸大学発達科学部教授)

A5判/上製/272頁
ISBN4-921190-31-3
本体2600円+税
発行
初刷:2005年7月25日

執筆者からのメッセージ
池上 惇(いけがみ・じゅん) 編者 はじめに・序章執筆

知的所有権からみますと、人生は能力貧困や所得貧困を克服するために、調査と学習を通じて自分を高め、社会に創造の成果を還元する営みではないでしょうか。この営みをともに拓く喜びを市民すべてのものに。

京都大学名誉教授・福井県立大学名誉教授 1933年生まれ
著書
  • 『文化と固有価値の経済学』(岩波書店,2003年)
  • 『財政学」-現代財政システムの総合的展開』(岩波書店,1990年)
  • ほか

柳ヶ瀬孝三(やながせ・こうぞう) 第1章執筆

経済学における「享受能力」の概念を再発見して、クリエイティブ社会で私たちも個性的な才能を発揮して能動的な役割を担えるような社会基盤について考えました。

立命館大学経営学部教授 1944年生まれ
論文・著書
  • 『潜在能力アプローチからみたソフト・インフラストラクチュア』(「立命館経営学」第38巻第1号,1999年5月)
  • 『大学評価と大学創造-大学自治論の再構築に向けて』(共著)(東信堂,1998年)
  • ほか

青木圭介(あおき・けいすけ) 第2章執筆

発達の経済学について考えるとき、人びとの生存、発達、自己実現の希望を、どのような制度や稼動(企業やNPOなど)によって支えられるか、という問題につねに注目してください。

京都橋大学文化政策学部教授 1944年生まれ
著書
  • 『現代の労働と福祉文化』(桜井書店,2002年)
  • ほか

森岡孝二(もりおか・こうじ) 第3章執筆

株主を資本家としてしかみない発想に囚われず、企業の社会的責任を問う株主運動を新しい社会運動と捉え、労働者が株主でもある時代の企業のあり方について考えてみたい。

関西大学経済学部教授 1944年生まれ
著書
  • 『企業中心社会の時間構造』(青木書店,1995年)
  • 『日本経済の選択』(桜井書店,2000年)
  • ほか

重森 暁(しげもり・あきら) 第4章執筆

新自由主義的構造改革のなかで公務労働が大きく変質させられようとしている。新しい市民的公共性の形成をめざして、人間発達保障を担う労働としての公務労働のあり方について、原点にたちかえって考えてみたい。

大阪経済大学学長 1942年生まれ
著書
  • 『文献社会の政策と財政』(桜井書店,2001年)
  • 『入門現代地方自治と地方財政』(自治体研究社,2003年)
  • ほか

成瀬龍夫(なるせ・たつお) 第5章執筆

現代社会は「リスク社会」。さまざまな社会経済的なリスクが生活を脅かしています。本書「人間発達と公共性の経済学」がみなさんの科学的なリスク・マネジメントの一助になることを願っています。

滋賀大学学長 1944年生まれ
著書
  • 『総説現代社会政策』(桜井書店,2002年)
  • 『生活様式の経済理論』(御茶の水書房,1988年)
  • ほか

植田和弘(うえた・かずひろ) 第6章執筆

環境問題は環境をつくりかえながら生きていく人間社会の自己制御システムの問題を問いかけています。その基盤たる環境認識と環境評価を行う主体の発達について考えてみました。

京都大学大学院経済学研究科および同大学院地球環境学童教授 1952年生まれ
編書
  • 『都市のアメニティとエコロジー』(岩波書店,2005年)
  • 『持続可能な社会のデザイン』(有斐閣,2004年)

藤岡 惇(ふじおか・あつし) 第7章執筆

M・ガンジー、マルクス、そして世界社会フォーラムの運動に学びながら、「エコ・エコノミー」を担う主体づくりの道を探っています。

立命館大学経済学部教授 1947年生まれ
著書
  • 『アメリカ南部の変貌』(青木書店,1985年)
  • 『「グローバリゼーションと戦争』(大月書店,2004年)
  • ほか

二宮厚美(にのみや・あつみ) 編者 第5章・終章・あとがき執筆

経済学は数値の世界を扱うものと理解している人がいるが、もともとは人と人の社会関係を考察するものであり、しかも、人を発達する主体としてとらえるものである。

神戸大学発達科学部教授 1947年生まれ
著書
  • 『日本経済の危機と新福祉国家への道』(新日本出版社,2002年)
  • 『構造改革とデフレ不況』(旺文社,2003年)
  • ほか
目次
  • はじめに 人間発達の経済学の生誕と現在 -歩んできた道と先覚者たちを回想しながら-  池上 惇
    • 序章 人間発達と固有価値の経済学  池上 惇
    • はじめに -金銭的蓄積の価値と人間発達の価値
    • 1.人間発達の経済学と固有価値論
    • 2.発達保障労働とインフラストラクチャー概念の提起
    • 3.A・センの潜在能力アプローチ
    • 4.現代の疎外と回復から創造へ
    • 5.展望 -現代産業論への応用と新しい労働観
  • 第1章 人間発達を支援する社会システムの経済思想  柳ヶ瀬孝三
    • はじめに -クリエイティブな生活思想の広がり
    • 1.憲法的ルールを享受する能力
    • 2.潜在能力の開発過程とそれを発揮する条件
    • 3.享受能力を育てる「人間発達を保障する労働」の役割 -創造と享受のコミュニケーション空間の再生条件-
    • おわりに-ストック時代の日本経済の課題
  • 第2章 現代の労働と福祉文化の発達  青木圭介
    • はじめに
    • 1.ジャパン・モデルと新自由主義モデル
    • 2.ホワイトカラーの組織など「新しい」労働運動
    • 3.成人への移行期に関する総合社会政策
    • 4.ニューエコノミー消費の代償としての過度労働
    • 5.消費と投資を制御するための新しい展開
    • 6.エスピン-アンデルセンの「社会的投資戦略論」
    • むすびにかえて
  • 第3章 CSR時代の株主運動と企業改革  森岡孝二
    • はじめに
    • 1.企業の社会的責任と社会的責任投資
    • 2.アメリカにおける株主運動の誕生とその背景
    • 3.アメリカにおける株主運動の発展と株主提案
    • 4.日本におけるSRIとCSRの胎動
    • 5.株主オンブズマンの株主提案活動
    • 6.二つのユニークな代表訴訟-政治献金と障害者雇用
    • おわりに-日本における株主運動の可能性
  • 第4章 人間発達と公務労働  重森 曉
    • はじめに
    • 1.人間発達保障労働としての公務労働
    • 2.福祉国家の限界と公務労働
    • 3.新しい市民的公共性と公務労働
  • 第5章 現代の国民生活とナショナル・ミニマムの意義  成瀬龍夫・二宮厚美
    • はじめに -ナショナル・ミニマムの出発点としての憲法
    • 1.ナショナル・ミニマム概念の三側面
    • 2.グローバル化のなかの福祉国家とナショナル・ミニマム
    • おわりに-人間発達とナショナル・ミニマム
  • 第6章 持続可能な発展と環境制御システム  植田和弘
    • はじめに
    • 1.環境問題の新しい質とその構造的把握
    • 2.持続可能な発展
    • 3.環境認識と環境評価
    • 4.環境的持続可能性と意思決定問題
    • 5.環境制御システムのデザイン -おわりにかえて
  • 第7章 ディープ・ピース -平和の担い手を育む社会経済システムの探求-  藤岡 惇
    • 1.「ディープ・ピース」とは何か
    • 2.「人間」とは何か、なぜ尊いのか
    • 3.暴力と戦争の経済的根源
    • 4.平和の担い手となるために個人でできること
    • 5.ディープ・ピースを支える社会経済システム
  • 終章 現代国家の公共性と人間発達  二宮厚美
    • はじめに
    • 1.二重の意味での公共性概念
    • 2.市場に呪縛された伝統的公共経済学
    • 3.物質代謝における人間の発達と公共性
    • 4.コミュニケーションと現代の公共空間
    • おわりに-残された課題
  • あとがき  二宮厚美
  • 執筆者から読者へ