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価値の理論  和田 豊著
価値の理論

価値論の新射程

労働価値規定をはじめ、生産価格論・転形問題、生産的労働論、国際価値論などを網羅、一貫した<労働過程論の視角>でマルクス経済学における価値論を再構築する。

A5判/上製/304頁
ISBN4-921190-25-9
本体4500円+税
発行
初刷:2003年12月9日

著者の言葉

幾多のマルクス派経済学者の予測と期待を裏切り続けた二十世紀が終焉した。新世紀を『資本論』とともに迎えた経済学者は,間違いなく少数派であろう。このことは,マルクスの労働価値論にいっそうよく当てはまる。『資本論』の分析を何らかの点で肯定的に評価する場合でも,継承すべきは労働価値論から切り離された形で再構成された価値形態論や物神性論や再生産論や産業予備軍の理論であるといった「労働価値論はずし」が,今日ではかつてほどに珍しい立場ではなくなっているからである。

しかしながら,経済学における価値論が商品の交換価値の実体・形態・水準を解明する理論であるとすれば,価値論は,それがいかなる内容のものとして構想されるかは別として,市場経済もしくはその一類型である資本制経済を分析対象とする経済学にとって欠くことのできない基礎理論である。したがって,代替説のない「労働価値論はずし」は不可能であり,労働価値論にたいする姿勢としては,既成の理論展開にみられる数々の欠陥を指摘することでよしとするのではなく,それらの欠陥を克服し労働価値論本来の分析力を回復させる方向で新たな理論構築をすすめる途が閉ざされているのか否かを,見極めるだけの慎重さが望まれるといえよう。本書が意図するのはそうした労働価値論の再構築である。

2003年8月 和田 豊

目次
  • はしがき
  • 第1章 マルクス派経済学の価格理論
    • 第1節 はじめに
    • 第2節 マルクスの労働価値論
    • 第3節 労働過程論の視角
    • 第4節 貨幣=価格形態の必然性
    • 第5節 交換価値の実体規定
    • 第6節 不等労働量交換の重層的展開
  • 第2章 貨幣の必然性論の諸類型
    • 第1節 課題の設定
    • 第2節 必然性論の原型
    • 第3節 必然性論の基本4類型
    • 第4節 新たな必然性論をめぐって
  • 第3章 労働価値概念の基本性格
    • 第1節 課題の設定
    • 第2節 労働価値概念の基礎
    • 第3節 労働価値概念の仮想性と現実性
    • 第4節 労働価値概念の共時性と通時性
  • 第4章 異種労働の抽象的労働への還元
    • 第1節 課題の設定
    • 第2節 価値比例説の展開
    • 第3節 諸説の特徴とその限界
  • 第5章 結合生産商品の労働価値規定
    • 第1節 問題の所在
    • 第2節 諸説の展開
    • 第3節 均等配分ルールの修正
  • 第6章 労働価値体系の生産価格体系への転形
    • 第1節 課題の設定
    • 第2節 転形問題解決の前提
    • 第3節 生産価格体系下の不等労働量交換
  • 第7章 転形問題論争の系譜と展望
    • 第1節 転形問題論争の源流
    • 第2節 新リカード派のフォーク論
    • 第3節 フォーク論克服の試み
    • 第4節 総計一致諸命題両立論の「復活」
    • 第5節 転形問題論争の現局面
    • 第6節 評価と展望
  • 第8章 生産的労働論争と労働価値論
    • 第1節 課題の設定
    • 第2節 商品論レベルの分析
    • 第3節 再生産論レベルの分析
    • 第4節 生産的労働論争の意義と限界
  • 第9章 諸搾取率の概念とその意義
    • 第1節 課題の設定
    • 第2節 搾取率の第1分類
    • 第3節 搾取率の第2分類
    • 第4節 搾取率の第3分類
    • 第5節 搾取率概念の批判
  • 第10章 労働価値論の国際的適用
    • 第1節 課題の設定
    • 第2節 分析の枠組み
    • 第3節 国際不等労働量交換の重層的展開
  • 人名索引
著者
和田 豊(わだ・ゆたか)

1957年,石川県金沢市に生まれる
1979年,名古屋大学経済学部卒業
(株)日立製作所勤務をへて
1986年,名古屋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学
名古屋大学経済学部助手,日本学術振興会特別研究員をへて
岡山大学経済学部教授(2019年3月末まで)