- 現代の労働と福祉文化 青木圭介著
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日本的経営と労働に未来はあるか?
ルールなき家族主義的支配の行方、福祉文化の視点からみる新しい地域社会と働く場
各国のモデルを検証しつつ展望する次なる労働のあり方
A5判/上製/196頁
ISBN4-921190-17-8
本体2600円+税
発行
初刷:2002年5月30日 - 著者の言葉
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後進資本主義国日本にあっては、フォード・システムの導入過程では、伝統的労働を企業規模別賃金格差構造のもとで活用し、中小零細企業における伝統的労働を下請制に編入することによって、国際競争力を確保した。しかしこのために、日本的経営は伝統的労働の職人性とパターナリズムを温存し、それを活用せざるをえないという現実を抱え込んでいたのであった。ここにキャッチアップ型には最適であった日本的経営のモデルが、多国籍企業が覇権を競うグローバリゼーションのもとでは、下請制や独自の労使関係の再編成と危機をひきおこすという根本的な問題が伏在していたと考えられる。
(中略)
本書では、キャッチアップ型としては強力であった日本的経営モデルが、グローバリゼーション型としては、強力な競争手段であった下請制や独自の労使関係の再編成と危機をひきおこすという視点から分析した。そして、日本的経営と日本の企業社会の変革の課題として、これまでとは逆にパターナリスティックな関係の解体と情報の技術とネットワークを背景とする一種の職人性と芸術性の再生を考え、その過程に人びとの個性的な自己実現欲求の高まり、消費者としての芸術文化の享受能力の発達、消費の変革による経済構造の変革ということを位置づけて論じた。
- 目次
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- 第1章 日本的経営と労働--日本はポスト・フォーディズムか--
- 第2章 日本的生産システムと労働組織
- 第3章 二極化した労働時間構造のもとでの労働と生活
- 第4章 フレキシビリティとジャパナイゼーション
- 第5章 ポスト・フォーディズム論と地域
- 第6章 「もろい社会」の再設計と地域における福祉
- 第7章 日本における福祉文化の再編の動向
- 第8章 経済と人間の有機的成長論と消費者主権--マーシャル・シトフスキー・ショア--
- 著者
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青木圭介(あおき・けいすけ)
1944年,広島県生まれ
京都大学大学院経済学研究科博士課程中退
1973年,広島女子大学文学部社会福祉学科
2001年,京都橘女子大学文化政策学部
文化経済学・社会政策・社会福祉計画論を担当