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桜井書店-日本の大国化とネオ・ナショナリズムの形成 -天皇制ナショナリズムの模索と隘路  渡辺 治著
日本の大国化とネオ・ナショナリズムの形成 天皇制ナショナリズムの模索と隘路

「殴る側」の大国となった日本

新しい衣装をまとって登場したものは……

改憲への動き
「日の丸」・「君が代」の法制化
「つくる会」歴史教科書問題
新手のナショナリズムの台頭
そして小泉内閣の新自由主義改革や集団的自衛権の見直し
靖国神社公式参拝発言……

いま日本はどうなっているのか
どこへ向かおうとしているのか

A5判/上製/352頁
ISBN4-921190-10-0
本体3000円+税
発行
初刷:2001年8月8日
品切れ中

著者の言葉

21世紀に入り,日本は冷戦後世界の唯一覇権国となったアメリカの世界戦略に従属しつつ世界の強国の仲間入りをすべく軍事大国化を急ごうとしている。この動きは,戦前とはまったく異なる環境の下,またまったく異なる衣装の下ではあるが,日本が再び「殴る側」の大国になったことを意味している。こうした道は,ぜひとも阻止し転轍させなければならない。それが現にこの日本に住む私たちの,世界とくにアジアの人々に対する責任である。本書が,かかる思いを持っている多くに人々に読まれ批判され,こうした方向への道を模索する人々と運動へのほんの少しの知的力になれれば,と願っている。

2001年7月 渡辺 治

目次
  • はしがき
  • 第1部 戦後政治の中の天皇
  • 第1章 戦後保守政治による国民統合の変容と天皇制
    • はじめに--戦後保守政治の推移と天皇制・検討の視角
    • 第1節 象徴天皇制の強制と抵抗の時代(1945-52年)
      • 1 国体存続に固執した昭和天皇と支配層
      • 2 天皇制の根本的改革と政教分離に固執した占領軍
      • 3 改革に対する昭和天皇の抵抗
    • 第2節 天皇制復古主義と民主主義運動の対抗の時代(1952-60年)
      • 1 「逆コース」へのダッシュ
      • 2 国民統合の精神的中核としての天皇の復活--改憲論の中の天皇
      • 3 国民の警戒感と「戦後民主主義」
      • 4 復古的天皇観と象徴天皇観の争い
      • 5 「大衆天皇制」のディレンマ
    • 第3節 戦後保守政治の開花と象徴天皇の時代(1960-80年)
      • 1 保守政治の転換と天皇--画期としての60年安保
      • 2 象徴天皇論の定着--保守政治の安定のための補完的役割
      • 3 天皇制復古主義の顛末
    • 第4節 早熟的大国化の時代と天皇(1980-89年)
      • 1 早過ぎた大国化の試み--中曽根「戦後政治の総決算」と天皇
      • 2 天皇復権政策の挫折とその障害物
    • 第5節 平成の天皇と保守政治の天皇利用の新戦略とその矛盾(1989年以降)
      • 1 昭和天皇の死去と代替わり儀式をめぐる支配層内の対立
      • 2 大喪の礼、即位の礼・大嘗祭をめぐる攻防
      • 3 保守政治の新たな戦略と新しい天皇利用の形態
      • 4 新たな天皇利用をめぐる保守政治と右翼の反対
      • むすびにかえて--本考察をふまえての若干の結論
  • 第2部 現代日本の大国化とネオ・ナショナリズム
  • 第2章 現代日本における新大国主義の台頭
    • 第1節 新大国主義とは何か
      • 1 1990年代における新たな大国主義的潮流の台頭
      • 2 新大国主義の諸特徴
      • 3 新大国主義のイデオロギーの新たな特徴
    • 第2節 戦後日本のナショナリズムとその挫折
      • 1 岸内閣の大国化政策の試み
      • 2 早熟的帝国主義復活構想の挫折
      • 3 1960-70年代の経済主義の政治の時代
      • 4 中曽根内閣における変化の兆し
    • 第3節 1990年代における新大国主義台頭の背景
      • 1 日本企業の多国籍化の特徴--多国籍化の遅れ
      • 2 多国籍企業の政治要求--現代の大国主義化の根拠
    • 第4節 新大国主義と日本政治の将来
      • 1 「政治改革」の意義
      • 2 1993年政変の意義
  • 第3章 大国化の新段階とネオ・ナショナリズムの台頭
    • 第1節 周辺事態法、国旗・国歌法についてのいくつかの仮説の批判的検討
      • 1 新ガイドラインの登場についての議論の検討
      • 2 国旗・国歌法の登場についての所論
    • 第2節 日本の現代帝国主義化--新たな軍事大国化の根拠
      • 1 遅れた日本帝国主義の復活
      • 2 多国籍企業化と帝国主義への衝動
    • 第3節 現代帝国主義とは何か?--帝国主義についての理論的検討
      • 1 現代世界を帝国主義と捉えることは妥当か?
      • 2 現代帝国主義と古典的帝国主義の違い
      • 3 現代帝国主義はなぜ軍国主義を求めるか?--三つの理由
      • 4 現代の戦争の新たな形態
      • 5 現代帝国主義の国民統合と新自由主義
    • 第4節 軍事大国化の第2段階とネオ・ナショナリズムの役割
      • 1 軍事大国化の第1段階としての周辺事態法
      • 2 軍事大国化の第2段階へ--「自前」の軍事大国化への衝動
      • 3 憲法改正への挑戦という決断の意味
      • 4 戦後における天皇制ナショナリズム涵養の挫折の教訓
      • 5 ネオ・ナショナリズムイデオロギーの形成と国旗・国歌法
      • 6 ネオ・ナショナリズムイデオロギー批判の視座
      • 7 新自由主義のねらうアメリカ型社会と治安国家
    • むすびにかえて
  • 第4章 ネオ・ナショナリズム台頭の背景と役割
    • はじめに--問題の所在
    • 第1節 新大国化イデオロギーとしてのインターナショナリズム
      • 1 1990年代初頭における新たな大国化イデオロギーの登場
      • 2 軍事大国化の二つの障害物--戦後民主主義とアジア諸国民の警戒
      • 3 1990年代における障害物克服の新たな方策
    • 第2節 1990年代中葉におけるネオ・ナショナリズムの台頭
      • 1 ネオ・ナショナリズム派の台頭
      • 2 ネオ・ナショナリズム派台頭の要因
      • 3 ネオ・ナショナリズムの論理と諸困難
    • 第3節 社会的統合の解体の進行とネオ・ナショナリズムの変貌
      • 1 企業社会的統合の危機と二つのイデオロギー
      • 2 新自由主義改革派の統合構想
      • 3 西部邁の対内的ナショナリズム思想
    • 第4節 軍事大国化の新段階とネオ・ナショナリズムの昂揚
      • 1 ネオ・ナショナリズムイデオロギーの昂揚と政治的地位の上昇
      • 2 ネオ・ナショナリズム昂揚の二要因
    • 小括--二つのイデオロギーの対立と分担
  • 第3部 天皇制に関する理論史的検討
  • 第5章 日本帝国主義復活と天皇制分析の視角
    • はじめに
    • 第1節 戦後天皇制研究の問題点
      • 1 戦後天皇制の根本問題
      • 2 戦後日本国家論・支配体制論と天皇制論の乖離
      • 3 戦後天皇制研究の問題点
    • 第2節 日本帝国主義復活と天皇制に焦点をあてた研究史
      • 1 1950年代後半-60年代初頭の日本帝国主義復活論と天皇制
      • 2 1960年代における日本帝国主義復活論と天皇制
      • 3 1970年代初頭における帝国主義復活論における天皇制
      • 4 1970年代以降における帝国主義復活論の後退
    • 第3節 戦後日本の支配構造の展開と天皇制の変貌
      • 1 現代政治の従属変数としての天皇制
      • 2 1950年代における支配層の復古的衝動と天皇制
      • 3 1960-70年代における経済主義的支配構造の形成と天皇制
      • 4 1980年代における支配構造の再編と天皇制
    • むすびにかえて
      • 1 湾岸問題と帝国主義復活衝動の亢進
      • 2 二つの天皇像の使い分け
  • 第6章 戦後憲法学と天皇制
  • 第1節 「天皇現象」が与えた憲法学へのインパクト--問題の所在
    • 第2節 日本国憲法は一枚岩ではない
      • 1 憲法の一枚岩的把握が支配的となった理由
      • 2 矛盾体としての日本国憲法
      • 3 日本国憲法の矛盾はどうして生まれたか?
      • 4 「天皇」規定と憲法解釈の混乱
    • 第3節 戦後憲法史の展開と天皇
    • むすびにかえて--憲法学の課題
  • あとがき
著者
渡辺 治(わたなべ・おさむ)